ビジネス

日比谷駅と錦糸町駅 実はライバル関係にある成り立ち

錦糸町駅は戦後、阪急・東宝資本によって発展した

 日比谷駅と錦糸町駅がライバル関係にある、と聞くと、意外に思われることが多いだろう。しかし、界隈が発展するきっかけはライバルと呼ばれるにふさわしい歴史をもっていた。『ライバル駅格差』(イースト新書Q)著者の小川裕夫氏が、日比谷駅と錦糸町駅がなぜ、ライバルと呼ぶのにふさわしいかについてレポートする。

 * * *
 皇居に近接する千代田区霞が関は、日本の中枢でもある中央官庁が集積している。霞が関に官庁が集中するようになったのは戦後からで、それまで庁舎は大手町・霞が関などに分散配置されていた。

 明治以降、銀座は発展をつづけた。一方、線路の反対に広がる日比谷一帯はほとんど都市化していなかった。日比谷公園は1902年にオープンするが、それまでは練兵場。いわば、軍用地。広い荒野でしかない。

 明治政府が内閣制に移行した1885年、初代総理大臣に伊藤博文が就任。重要ポストの外務大臣には盟友の井上馨が就いた。

 井上は内閣府直属の臨時建築局総裁も兼任。臨時建築局とは聞き慣れない官庁名だが、これは官庁街づくりを使命とする部署だった。井上は日比谷一帯に官庁を集積させることを構想していたのだ。

 明治政府の首脳の中でも、井上は都市計画を語らせたら右に出る者はいないほどの人物。井上が思い描いた構想は、日比谷一帯に西洋風の官庁街を建設するというものだった。官庁集中計画の途中で、井上は不平等条約の改正に失敗。その責任を取る形で外務大臣を辞任した。そのため、臨時建築局は自然消滅する。

 わずかな期間しか存在しなかった臨時建築局が日比谷に残した爪痕は、赤レンガの法務省庁舎ぐらいしか残っていない。

 井上失脚後、練兵場が移転。同地に日本初の洋風公園となる日比谷公園がオープンした。都市化が著しく進んだ現在においても、東京都心部とは思えないほど日比谷公園は豊かな自然をたたえる。日比谷公園内は官庁街・霞が関と接し、反対側には2018年にオープンしたばかりの東京ミッドタウン日比谷が控える。

 繁華街としても注目される日比谷だが、周辺には昔から帝国劇場や東京宝塚劇場などが立地する。日比谷の発展史は、これら劇場を抜きに語ることはできない。

 日比谷が劇場街として歩み始めるのは、1911年に帝国劇場が設立されてからだ。しかし、それまでには長い紆余曲折があった。

 帝国劇場が姿もなかった1883年。日比谷に鹿鳴館が落成する。諸外国との文化交流の場になっていた。この鹿鳴館も井上が構想したものだった。

 鹿鳴館は欧化主義との強い批判を受けながら、貴重な外交の場になっていた。政府は鹿鳴館で日夜ダンスパーティーをつづけたのも、「西洋に追いつけ、追い越せ」という意識があったからだ。

関連記事

トピックス

維新はどう対応するのか(左から藤田文武・日本維新の会共同代表、吉村洋文・大阪府知事/時事通信フォト)
《政治責任の行方は》維新の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 遠藤事務所は「適正に対応している」とするも維新は「自発的でないなら問題と言える」の見解
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
《高市首相の”台湾有事発言”で続く緊張》中国なしでも日本はやっていける? 元家電メーカー技術者「中国製なしなんて無理」「そもそも日本人が日本製を追いつめた」
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
NEWSポストセブン