ライフ

人はなぜ「ストーリー化」された情報を求めるのか

 先ほどの、国王と王妃の逝去の例に戻ってみる。「悲嘆のため」の一節を追加するのは、1つの方法だ。悲嘆が王妃の逝去の原因かどうかはわからないが、読み手はそのように理解してしまうだろう。

 他にも、情報の一部分を敢えて削除する方法がある。

【事実】国王が逝去し、そして、その19年後に、元王妃が逝去した。
【発信】国王が逝去し、そして、王妃が逝去した。

 2人の死の時間間隔を敢えて隠したり、「元王妃」を「王妃」とすることで、2人の死の関係性を高めようとしている。これは、一節を追加する方法よりも、情報を発信する人にとって罪悪感が少ないかもしれない。「発信できる文字数に制限があるため、やむを得ず削除した」などと、情報を削る言い訳ができるためだ。

 また、事実とは順番を変えてしまう方法もある。

【事実】王妃が逝去し、そして、国王が逝去した。
【発信】国王が逝去し、そして、王妃が逝去した。

 実際には、王妃の死を悲嘆したために、国王が逝去したのかもしれない。しかし、順番を変えてしまうことで、原因と結果が入れ替わってしまう。こうなると、もはや発信された情報から事実をうかがい知ることはできない。このようなやり方は、ストーリー化の域を超えて、事実を捻じ曲げていると言わざるを得ないだろう。

 そもそも、人は、なぜ、ストーリー化を求めるのか。この問いに対して、心理学や行動経済学で、さまざまな研究・議論がなされている。

 これは筆者の私見だが、物語にすることで安心できるからではないだろうか。人は、日常とは異なる状況や事態を目にしたときに、それをそのまま受け入れることは難しい。心の中で、何らかの決着をつける必要がある。そこで、ストーリー化という、事実の加工処理を求めるのではないかと考えられる。

 それでは、ストーリー化が高じるとどうなるだろうか。つぎの例を、みてみよう。

関連記事

トピックス

”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
クマ対策には様々な制約も(時事通信フォト)
《クマ対策に出動しても「撃てない」自衛隊》唯一の可能性は凶暴化&大量出没した際の“超法規的措置”としての防御出動 「警察官がライフルで駆除」も始動へ
週刊ポスト
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下主催の「茶会」に愛子さまと佳子さまも出席された(2025年11月4日、時事通信フォト)
《同系色で再び“仲良し”コーデ》愛子さまはピンクで優しい印象に 佳子さまはコーラルオレンジで華やかさを演出 
NEWSポストセブン
「高市外交」の舞台裏での仕掛けを紐解く(時事通信フォト)
《台湾代表との会談写真をSNSにアップ》高市早苗首相が仕掛けた中国・習近平主席のメンツを潰す“奇襲攻撃”の裏側 「台湾有事を看過するつもりはない」の姿勢を示す
週刊ポスト
クマ捕獲用の箱わなを扱う自衛隊員の様子(陸上自衛隊秋田駐屯地提供)
クマ対策で出動も「発砲できない」自衛隊 法的制約のほか「訓練していない」「装備がない」という実情 遭遇したら「クマ撃退スプレーか伏せてかわすくらい」
週刊ポスト
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
文京区湯島のマッサージ店で12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕された(左・HPより)
《本物の“カサイ”学ばせます》12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕、湯島・違法マッサージ店の“実態”「(客は)40、50代くらいが多かった」「床にマットレス直置き」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
NEWSポストセブン