治療は凍結針を刺し、液体窒素で針の周囲を約10分間かけて凍結させる。その後、液体窒素の注入を止め、約10分間かけて解凍する。これを3回繰り返すことで、がんが死滅する。治療時間は1時間半、凍結した部位は約6か月かけて徐々に縮小していく。その過程で肺機能がほとんど低下しないことも、この治療のメリットだ。ただし、心臓に近い部分や太い気管支の根元のがんには実施できない。
凍結治療では2~3センチの肺がんの再発率は約40%となる。これらの大きさのがんに対する治療として野守医師が中心となり、世界で唯一実施しているのが、放射線の定位照射(ピンポイント照射)と凍結治療の併用である。
治療は放射線を最初に照射し、2~3週間ほどして凍結治療を行なう。理由は最初に凍結を行なうと、がんの部分が低酸素となり、放射線が無効になるからだ。さらに放射線照射後1か月以上経過すると繊維化が進行するため、がんの位置がわからなくなって凍結できなくなる。以上の理由で、定位照射を5日間実施し、治療後3週間以内に凍結治療を始める。
「現在まで放射線と凍結併用治療を62例に実施しましたが、局所の再発は2例だけです。従来は放射線治療後の凍結治療は禁忌とされていました。放射線性肺炎のリスクが高くなるから、というのが理由でしたが、実際には放射線単独と凍結治療併用の間で肺炎発生率に差はありませんでした」(野守医師)
凍結治療は原発性肺がんだけでなく、転移性肺がんにも治療可能だ。凍結治療は自費診療で治療費が70万円ほどかかり、別途5日間の入院費用などが必要となる。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2018年9月14日号