こうしたなかで平成3年の秋に馬番連勝複式(馬連)が導入されたが、これはさらなる売上増を見込むというより、出走取り消しがあった場合など枠連の不具合を補う意味合いが強調され、高額配当が見込めることを積極的にウリにしていなかった印象がある。
その後も売上は毎年増加を続け、平成9年にはついに4兆円の大台に乗る。一般企業なら売上高ランキングのベスト10にも入ろうかという数字だが、これを担ってきたのはたった4種類の商品(馬券)だけだったのだ。
しかし売上は平成不況のあおりからかこの年をピークに下降線をたどり始める。14年連続のマイナス。その間、平成11年にワイドが導入され、平成14年には大井に遅れること6年、やっと馬単が導入された(同年三連複もスタート)。しかしマイナス傾向に歯止めはかからず、2年後の平成16年には三連単の導入となった(当初は後半4レースのみ)。それでも売上は下げ止まらず、平成23年には2兆2000億円台にまで落ち込む。
平成29年度の馬券売上は2兆7476億6248万4800円。インターネット投票の拡大や若い世代へのPRが奏功したからか平成24年からはずっと前年比プラスだが、馬連導入前、馬券3種類しかなかった平成2年を下回っている。
もちろん、娯楽が多様化した時代に単・複・枠連・馬連4種類の馬券だけではさらなるマイナスになったのだろう。しかし、競馬の面白さ楽しさと、馬券の種類が多いことはそれほど関係ないということではないのだろうか。
●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
※週刊ポスト2018年9月21・28日号