ライフ

明治維新150年 ハワイと箱根を繋ぐ数奇な物語

◆消えた「仙太郎」

 元年者が上陸した時、通訳を務めた仙太郎のことは、リーダーの牧野富三郎が日本に宛てた手紙にも記されている。

〈神奈川の産にて仙太郎と申すもの壱人残り居り候、話もよく分かり厚く世話いたしてくれ、地獄にて仏に会った心地〉

 この仙太郎が誰であるかについては、さまざまな説がある。ちなみに元年者には「石井仙太郎」という人物がいたが、彼は通訳の「仙太郎」とは別人であることがわかっている。

 ジョン万次郎と共にハワイに漂着した船頭の千(仙)太郎であるとする説もあったが、当時の年齢が64歳になることもあり、現在は否定されている。

 同じく漂流者であったジョセフ・ヒコ(浜田彦蔵)と共に難破した栄力丸に乗り組んでいた広島県瀬戸田の仙太郎(通称:サム・パッチ)だとする説もある。ならば、明治元年当時、仙太郎は30代だったことになる。

 しかし、元年者到着直後の地元新聞(ハワイアンガゼット紙)には「流暢な英語を話す日本人の少年が彼らの通訳をした」との記述がある。30代を少年とは呼ばないだろう。やはり仙太郎は仙之助だったのでは。調べるほどにそう思えてならない。

 やがて、各地で働く元年者に問題が生じる。労働環境が劣悪だったのである。特にコウラウ耕地では、一緒に働いていた中国人労働者にはあった休暇さえ与えられず、抗議行動に立ち上がった。

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