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明治維新150年 ハワイと箱根を繋ぐ数奇な物語

元年者を乗せて海を渡った「サイオト号」(Bishop Museum Archives)

 天高くそびえる煙突と、朽ち果てたコンクリートの残骸。元年者が去ってまもなく農園は閉鎖されたという。廃墟の真ん中にはえた巨木が過ぎ去った年月の長さを物語っていた。

◆成功者たちの足跡

 明治維新の頃、ハワイでは石油の普及で鯨油の需要がなくなり、捕鯨船の基地としての役割が終わろうとしていた。代わりの産業として注目されたのがサトウキビの栽培である。だが、欧米人の持ち込んだ疫病でハワイの人口は激減。労働力不足を移民で補う必要があった。

 こうして、ハワイ王国が日本のハワイ総領事に任命したオランダ系アメリカ人のヴァン・リードによる移民の募集が、江戸(東京)と神奈川(横浜)で行なわれたのだ。

 明治に年号が変わるのは1868年9月のこと。当初、ヴァン・リードは、徳川幕府と交渉し、旅券発行の約束をとりつけた。だが、5月に横浜が新政府の支配下に入る。新政府は江戸幕府の発行した旅券を無効としたが、新しい旅券は発行してくれない。業を煮やしたヴァン・リードは5月17日、ついに無許可で横浜を出航する決心をした。

 乗船したのは「サイオト号」というアメリカで建造された英国船籍の帆船だった。元年者は職人が多く、荒くれ者の遊び人も少なからず含まれていた。20代が大半で、彼らは異国での一攫千金を夢見ていた。

 佐久間米吉という人物が書き残した「元年者航海日記」という記録がある(注:日付は旧暦)。

〈4月26日 大風。少々曇。雨降る。
 〃27日 大風。少々曇。雨降る。波高き嵐に御座候。
 〃28日 右同断。26日より28日迄は1人たりとて食事致すもの御座なく候〉

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