◆問題点4/医療ムラの都合
ここに挙げたX線検診の問題点は、医療関係者にとって周知の事実だ。それなのに、制度が変わらない。
実は、読影料は1件あたり500~800円で、第一線を退いた医師などに委託されることが多い。数時間で5万~10万円の収入になる計算だ。「先輩医師の収入源は奪いづらい」という構図がある。
また、肺がんのX線検診は、結核対策として普及したシステムである。その後、結核は激減したので、装置や人員が肺がん検診に流用されていたのだ。小さな早期がんを発見するには、最適な画像ではない。
「発見精度が低いX線検査を毎年受けるよりも、2~3年に一度、低線量CT検診を行う方式に切り替えた方が、肺がんで死ぬ人を確実に減らせるでしょう」(前出・河野医師)
低線量CTなら、被曝量はX線の3倍程度に抑えて、早期発見の可能性が高まる。早期の発見でVATSの適用となれば、術後3~5日で退院可能となり、後遺症も少ない。
●取材・文/岩澤倫彦(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2018年10月12・19日号