阿部は30代半ばから、『TRICK』や『テルマエ・ロマエ』、「新参者シリーズ」とヒット作に次々と出演してきた。幅広い役をこなし成長を続けてきた阿部にとって、『下町ロケット』はどんな作品なのか。
「これまであまり1つのシーンに十何人もの役者が集まって撮影する現場を経験したことがありませんでした。『下町ロケット』は出演者がとても多く、出演者全員で共に熱くなって作り上げるという意味で、僕にとってはまったく新しいドラマです。また、幅広い年代の役者さんに囲まれて仕事をするので、気付かないうちに多くのことを学んでいると実感しています」
撮影は8月15日に始まり、9月29日から5日間、新潟県燕市でスタッフ総勢100人の大規模ロケが敢行された。現場には散水車や大型の送風機が並び、大型の台風24号が迫る悪天候のなか、早朝から夜遅くまで撮影が続いた。
3台のカメラを同時に回し、一見何の問題もなさそうに見えるシーンでも、幾度となくテイクを重ねる。演出の福澤克雄監督とは、3年前の『下町ロケット』からの付き合いだ。今年1月に公開された新参者シリーズ最終作『祈りの幕が下りる時』の監督でもある。
「シーンの頭から最後までを繰り返し撮影して、途中でカメラを止めないのが福澤監督の流儀。一見ハードですがそのスタイルは僕にとって楽。気持ちが継ぎはぎにならない分、メロディーが作れる。『下町ロケット』に向き合う姿勢は3年前と何ら変わっていません。
監督を信じてついて行くだけだし、実は細かい打ち合わせもしていません。監督のパワーに現場全体が引っ張られて撮影が進み、カメラが回ればごく自然に僕が社長として社員全員を率いています」