終始笑顔を絶やさずに屈託なく話す山口だが、その女優人生は順風満帆とはいえなかった。14歳でドラマデビューを果たした後、『笑っていいとも!』などのバラエティ番組に出演したり歌手デビューするうちに“色”がつき、本業の女優の仕事が激減。さらに、週に1度は繰り返される原因不明の高熱や体調不良に悩まされ、22歳で引退を決意。最後の仕事と挑んだのが、演出家・野田秀樹の舞台『オイル』だった。
「稽古開始早々に声を潰して、動けない。錚々たる役者の皆さんをお待たせする中、私だけの稽古が延々と続いて……逃げ出したくなりました。でも、いざ本番になると心が勝手に反応して、考えるより先に体が動くようになって。それは初めての体験で、驚くほどの高揚感、お客さんとの一体感は震えるほどでした。やめたくない──女優に縋(すが)ろうとする私がいました」
その芝居を見た演出家の蜷川幸雄から声がかかり、『エレクトラ』という大舞台を経験。以後、『コウノドリ』や「絶対零度」シリーズなど連ドラ60本以上に出演する実力派女優に成長した。この数年は、1クールに数本のドラマに並行出演するほどの忙しさだ。
「息抜きはサーフィン。まだ初心者ですが、ようやく自分で波を選んで乗れるようになりました。日焼けができないので、夜中2時頃に起きて湘南や伊豆の海まで車を飛ばして、薄暗い日が昇る直前から1時間限定の至福のひと時。目鼻口だけを出した真っ黒のウェットスーツを着てるから周りから見たら変な人ですよね(笑い)」
好奇心旺盛で多趣味と評判。山登りや釣りが大好きで、料理もプロ級の腕前という。たびたび友人を自宅に呼んで手料理をふるまう。