国内

目黒女児虐待死事件、近所や会社での評判が良かった継父

厚労省の報告書は23ページに及んだ

 香川県の北西部に位置する善通寺市は、真言宗の開祖である空海の生誕の地として知られている。瀬戸内海に近く温暖な気候で、豊かな自然の合間に田畑が広がるのどかな土地だ。栽培が難しい、立方体の形をした「四角スイカ」は、善通寺市だけの名産品である。同時に大小400基もの古墳が点在する、「古墳のまち」としても知られている。

 ある有名古墳の裏山の中腹に、1軒の瓦葺き屋根の木造家屋が建っている。

「この辺りは米農家が多かったが、年々、米が取れなくなってきて、農業一本でやってける家は少ない。みんな兼業農家やき」

 と近所の住民は言うが、この一軒家も兼業農家を営んでいるようだ。玄関ドアには、子供がチョークで描いたような落書きがある。楽しそうな笑顔の女の子の絵。そして、ひらがなを練習したような線。かろうじて、「ゆあ」と読みとれる。

 ここが、2018年3月、東京・目黒区のアパートで両親の虐待によって亡くなった船戸結愛ちゃん(当時5才)の祖父母が暮らす家だ。保護責任者遺棄致死の罪で起訴されている母親の船戸優里被告(26才)は、この家で育ったという。

 結愛ちゃんは東京で亡くなるほんの2か月前まで、この家から車で20分ほどの善通寺市内のアパートに住んでいた。玄関ドアの落書きを見ると、祖父母の家に遊びにきた結愛ちゃんが、元気いっぱいに家の周りで遊び回る様が目に浮かぶようだった。

 10月3日、厚労省の専門委員会がこの事件を検証し、まとめた報告書を発表した。委員会の代表であり、関西大学人間健康学部教授の山縣文治さんが言う。

「虐待事例の個別検証は、3、4ケースをまとめてヒアリングし、一括して報告するのが通常ですが、この事件は単独で検証する必要があると感じました。それだけ結愛ちゃんの残したメモが痛ましく悲しい内容であり、われわれも含めて社会全体が、大変な状況だと感じたということです」

 23ページにわたる報告書では、児童相談所(以下、児相)の引き継ぎなど問題点を指摘しているが、「児相だけの問題ではない」との声も多く、根本的な問題解決には遠い。

 2017年度に全国210か所の児相が受けた相談件数は、13万3778件で過去最多だった。うち、警察など捜査機関から児相への通告は6万6055件。約半数をしめる。

 今年はさらに虐待件数が増えている。10月4日に明らかになった警察庁の統計データによると、2018年度上半期(1~6月)、児童虐待の疑いで全国の警察が児相に通告した件数は3万7113人にのぼり、2017年度の過去最多ペースを大きく上回った。警察に検挙された件数は641件で「身体的虐待」が80%を超え、次いで「性的虐待」(15.3%)、「ネグレクト」(2.3%)と続いた。死亡した児童は19人―このうちの1人が結愛ちゃんだった。

関連記事

トピックス

真美子さんが完走した「母としてのシーズン」
《真美子さんの献身》「愛車で大谷翔平を送迎」奥様会でもお酒を断り…愛娘の子育てと夫のサポートを完遂した「母としての配慮」
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)千葉県の工場でアルバイトをしていた
「肌が綺麗で、年齢より若く見える子」ホテルで交際相手の11歳年下ネパール留学生を殺害した浅香真美容疑者(32)は実家住みで夜勤アルバイト「元公務員の父と温厚な母と立派な家」
NEWSポストセブン
トランプ米大統領と高市早苗首相(写真・左/Getty Images、右/時事通信フォト)
《トランプ大統領への仕草に賛否》高市首相、「媚びている」「恥ずかしい」と批判される米軍基地での“飛び跳ね” どう振る舞えば批判されなかったのか?臨床心理士が分析
NEWSポストセブン
アメリカ・オハイオ州のクリーブランドで5歳の少女が意識不明の状態で発見された(被害者の母親のFacebook /オハイオ州の街並みはサンプルです)
【全米が震撼】「髪の毛を抜かれ、口や陰部に棒を突っ込まれた」5歳の少女の母親が訴えた9歳と10歳の加害者による残虐な犯行、少年司法に対しオンライン署名が広がる
NEWSポストセブン
新恋人A氏と交際していることがわかった安達祐実
《新恋人発覚の安達祐実》沈黙の元夫・井戸田潤、現妻と「19歳娘」で3ショット…卒業式にも参加する“これからの家族の距離感”
NEWSポストセブン
キム・カーダシアン(45)(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストの元妻の下着ブランド》直毛、縮れ毛など12種類…“ヘア付きTバックショーツ”を発売し即完売 日本円にして6300円
NEWSポストセブン
レフェリー時代の笹崎さん(共同通信社)
《人喰いグマの襲撃》犠牲となった元プロレスレフェリーの無念 襲ったクマの胃袋には「植物性のものはひとつもなく、人間を食べていたことが確認された」  
女性セブン
大谷と真美子夫人の出勤ルーティンとは
《真美子さんとの出勤ルーティン》大谷翔平が「10万円前後のセレブ向けベビーカー」を押して球場入りする理由【愛娘とともにリラックス】
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(秋田県上小阿仁村の住居で発見されたクマのおぞましい足跡「全自動さじなげ委員会」提供/PIXTA)
「飼い犬もズタズタに」「車に爪あとがベタベタと…」空腹グマがまたも殺人、遺体から浮かび上がった“激しい殺意”と数日前の“事故の前兆”《岩手県・クマ被害》
NEWSポストセブン
「秋の園遊会」でペールブルーを選ばれた皇后雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《洋装スタイルで魅せた》皇后雅子さま、秋の園遊会でペールブルーのセットアップをお召しに 寒色でもくすみカラーで秋らしさを感じさせるコーデ
NEWSポストセブン
チャリティーバザーを訪問された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《4年会えていない姉への思いも?》佳子さま、8年前に小室眞子さんが着用した“お下がり”ワンピで登場 民族衣装のようなデザインにパールをプラスしてエレガントに
NEWSポストセブン