香川県の児相も結愛ちゃんへの虐待を認知していた。警察に通報されたこともあった。通う幼稚園も見守っていた。引っ越し先の管轄である東京・品川の児童相談所へも「緊急性の高い案件」だと引き継がれた。本来であれば今ピカピカの1年生のはずだ。母親は小学校の説明会にも出席していた。誰にも気づかれずに虐待され続けたわけではない。大人が気づき、ケアをしていたはずだった。それなのになぜ、最悪の結果を招いたのか。なぜ、幼い結愛ちゃんを助けることができなかったのか。

◆もうおねがい ゆるして ゆるしてください

 事件を振り返る。6月6日、優里と再婚相手で結愛ちゃんの“父親”となった雄大被告(33才)が保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。「暴行し、食事を与えず、病院に連れて行かなかった」と認めたものの、その後は黙秘を続ける。一方の優里は「虐待を、見て見ぬふりをしていた」という。

 結愛ちゃんは今年1月下旬、目黒に引っ越してから充分に食事を与えられず、2月に雄大から暴行を受けても病院に連れて行かれず、3月2日に死亡した。肺炎による敗血症だった。

 死亡時の結愛ちゃんの体重は同年代の平均を8kg以上下回る12.2kg。朝食にスープ1杯、昼食はご飯を茶碗に3分の1、夜は茶碗半分程度しか与えられず、おむつをはかされていた。優里と雄大の間には2016年、長男(当時1才)が誕生し、一家4人で暮らしていたが、結愛ちゃんだけが別の寝室だった。

 極度なダイエットを強要され、お風呂では冷水を浴びさせられた。毎朝4時にひとり起床して、明かりもない寒い部屋の中で、ひらがなの練習を強いられる日々だった。

《おなじことはしません ゆるして きのうぜんぜんできてなかったこと これまでまいにちやってきたことをなおします これまでどれだけあほみたいにあそんでいたか あそぶってあほみたいなこと やめるので もうぜったいぜったいやらないからね ぜったいぜったいやくそくします》

◆仕事がんばってるんよ、子供を養わないといけないん!

 米国の調査によれば、親から虐待を受けた子供の3割は、自分の子供に同じように暴力を振るう「虐待の連鎖」があるという。多くの虐待家庭のカウンセリングにあたってきたカウンセラーで、元児相職員の山脇由貴子さんが言う。

「虐待を受けて育ってきた親たちは、親から愛された経験がないため、子供をどう愛していいのかわからないうえ、『自分もやられてきているし、これくらいは暴力ではない』と考える傾向にあります」

 優里は、どんな育ち方をしたのか。優里は香川県善通寺市に生まれ、高校まで地元の学区に進学した。高校の同級生が語る。

関連記事

トピックス

ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン