角栄はいつも鼻歌を歌い、人を笑わせる話をして、隊では人気者だったという。

 当時はノモンハン事件の激戦のさなかで、部隊では古兵から順に前線に送られていた。日本軍は、航空戦では優位に立っていたが、地上戦ではソ連軍に大きな劣勢を強いられていた。そんななかでも飄々としている角栄を上官らが苦々しく思ったのは容易に想像がつくが、なぜか小野澤氏は角栄をいたく気に入ったようなのだ。

 角栄は調子がいいだけの男ではなかった。

 部隊の教育計画書が連隊本部から突き返され、2日で修正と清書をしなければならなくなったときに、切羽詰まった中隊長は、建築家の角栄に頼み込んだ。角栄は上官らをアゴで使いながら1日で仕上げ、窮地を救ったというエピソードが『戦場の田中角栄』に紹介されている。この一件で、上官らの角栄に対する態度が一変したという。

 角栄は結局、ノモンハン戦線に送られることなく、昭和14年9月16日、ソ連軍との停戦が成立。命拾いしたが、その後15年11月、角栄は営庭で突然倒れた。クルップ性肺炎と診断され、内地に送還。戦病兵として除隊となった。

 一方、小野澤氏は北満州に残り、終戦まで前線で戦った。満州からシベリアへ抑留された日本兵は多かったが、幸運にも抑留を免がれ、1年後の昭和21年7月に復員した。

◆「オレの秘書になってくれよ」

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