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日本の「自己責任論」に拍車かけた小泉政権と小池百合子氏

2004年にイラクで発生した日本人人質事件で“自己責任”を論じた小池百合子氏(共同通信社)

 シリアで武装勢力に拘束されていたジャーナリストの安田純平さん(44才)が10月末、約3年4か月ぶりに解放されて帰国した際、安田さんを待っていたのは、「助かってよかった」という安堵の声だけでなく、「国に迷惑をかけるな」「われわれの税金を無駄遣いするな」などという厳しいバッシングだった。「自己責任」に関する議論が起きたのだ。

「自己責任」というものについては、時に被害者に対するバッシングにつながることも少なくない。

 2015年に中学1年生の男女が早朝の街で連れ去られ、遺体で発見された寝屋川市中1男女殺害事件や、2017年にネットを媒介にして9人の男女が殺害された座間9遺体事件などの凶悪犯罪では、「子供が真夜中に出歩くのはおかしい」「見知らぬ男の家に行くのも悪い」などと、“被害者の落ち度”を責める自己責任論がネット上にあふれたのだ。

「自己責任」という言葉が実際に世に浸透し始めたのは、1980年代後半だ。バブル経済の時代にリスクがある金融商品への投資に対し、「価格の変動で損失を被ったり、元利払いが行われなくなったりする危険性は自ら負わなければならない」との説明がなされたことが契機とされる。

 バブル崩壊後には政治家も公然と「自己責任」を口にし始める。1997年、橋本龍太郎首相(当時)が「バブル後の不良債権の処理で『自己責任』が問われる」などと発言。2001年に首相に就任した小泉純一郎氏は、「官から民へ」をスローガンに、年金改革や医療制度改革、生活保護費の削減で社会制度を縮小、「自己責任社会」を創出した。

 よく小泉政権は「アメリカ的な実力主義、競争社会を日本に取り入れた」と評価される。ただ、それは中途半端なものだ。

 欧米は厳しい実力社会であると同時に、キリスト教的な相互扶助の精神が強固に根づいているので、社会のバランスが取れている。欧米人にとって、成功者が慈善活動を通じて弱者を救い上げることは当たり前のことだ。しかし、小泉政権下の日本は「競争」だけを輸入し、「相互扶助」は捨て置いた。

 政治や経済の分野で用いられることが多かった自己責任が現在のように使われ出したのは、2004年にイラクで発生した日本人人質事件だろう。

 この時、イラクでボランティアをしていた日本人女性ら3人が武装勢力に誘拐され、犯行グループは、同国サマワに駐留する自衛隊の撤退を要求した。日本政府が要求を拒否すると、3人は地元宗教指導者の仲介で解放された。

「無謀ではないか。一般的に危ないと言われている所にあえて行くのは、自分自身の責任の部分が多い」

 当時、こう3人を斬って捨てたのは、小泉政権で環境相を務めていた小池百合子氏(現・東京都知事)だ。小池氏の発言を機に、与党の政治家から3人の自己責任を問う声が噴出。読売新聞も社説で立て続けにこう論じた。

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