『発達障害に生まれて』の著者で小児外科医の松永正訓さん(撮影/浅野剛)


松永:SOSを出すというのは非常に大事なことで、SOSを出すことによって、その子どもと社会との接点がどんどん太くなっていくんですね。病気を公表してSOSを出すということは、社会とともに生きることですから。それが共生することですよね。障害を持っている子とか弱い立場にいる人って、結局孤立して生きることはできないし、孤立しちゃいけないんです。社会と一緒に生きなきゃいけない。

 社会と一緒に生きている姿こそが本当の意味の自立なんだとぼくは思いますね。自立というのはひとりぼっちで家の中に閉じこもっているわけではなくて、いろんな人に助けてもらって、いろんな人と一緒に生きる。みんなとともにあることが本当の意味での自立だと思います。

奥山:自己完結する力を親がいなくなる前に能力として子どもにつけさせたいと思っていたんですけど、そういう側面だけではないんだな、と思いました。周りに助けてもらう、助けてくださいと言うことも自立なんですね。

松永:そうですね。だって結局、この部屋にいるスタッフを含めた全員、高齢者になってヨボヨボになって、自分のことを自分でできなくなるんですから。その時に周りの人に支えてもらう。そうやって社会って成り立っているわけですから。障害児はわれわれの社会の“水先案内人”のような言い方がありますけど、われわれがこの後生きていく社会のあるべき姿を、障害児が教えてくれているんだとぼくは思います。

奥山:水先案内人っていい言葉ですね。私も今はとりあえず支障なく電車に乗って生活して、仕事場に行って帰って、ということができていますけど、いずれ何かしらできなくなることが多くなってくることを考えたら、誰かに頼らざるを得ない時期はきっとくる。

 それが誰しも言えるとしたら、今何もできない人をできないところに閉じ込めて、できる人だけここに、という考えはすごく恐ろしいものだと思います。いろんな人が世の中にいて、共存し合って、助け合って、できる人ができることをやって、できない人が助けてくださいということが当たり前になれば、いずれ自分ができなくなった時に自分が生きやすくなるんですよね。

松永:おっしゃる通りです。社会の意識が少しずつでも、そういう方向に向かっていくことを期待したいですね。

【プロフィール】
◆小児外科医・松永正訓さん/1961年、東京生まれ。「松永クリニック小児科・小児外科」(千葉県千葉市)院長。2013年に『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』(小学館刊)で第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。読売新聞の医療・介護・健康情報サイト「yomiDr.(ヨミドクター)」で連載を持つなど、命の尊厳をテーマとした記事や作品が各所で好評。

◆女優・タレント・奥山佳恵さん/1974年、東京生まれ。2001年に結婚。2002年に長男・空良(そら)くんを、2011年に次男・美良生くんを出産。美良生くんが生後1か月半の時、ダウン症と告げられる。著書に、美良生くんの育児日記を公開した、ドキュメンタリーエッセイ『生きてるだけで100点満点!』(ワニブックス刊)がある。

※女性セブン2018年12月13日号

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