芸能

『大恋愛』のムロツヨシは「横顔」で女性視聴者を魅了した

横顔は二枚目だったムロツヨシ(時事通信フォト)

 キャスティングはドラマの生命線だが、意表をつく人選で成功した作品といえばこれだろう。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 注目を集めつつ幕を閉じた『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)は、大きな余韻を残しました。

「一気にムロファンに」「ムロさんを見直した」「温かな真司の存在が心に沁みます」といった賞賛の声をあちこちで耳にします。これまで「二の線」に分類されることがほぼなかったムロさんに、「思わずどきっとした」「胸キュン」「優しさに涙がこぼれました」という女性視聴者も多かったもようです。

 一つ言えること。それはこのドラマが、ムロツヨシという役者の「転換点になった」ということでしょう。ではいったい何ゆえに、こうも魅力的な男に映ったのか? 何が、恋愛ドラマにおけるムロツヨシの強さとなったのでしょうか?

 まず、ドラマを見ていて気付いたのは「横顔」の魅力です。

 何かにじっと耐えている美しさや哀しみ、静かな中に深いものが感とれました。「横顔」が映し出されるシーンはたびたびありましたが、輪郭は彫刻のようにきりっとしていて、光の陰影効果もあるのか哀しみや憂いのような深味も感じられました。そう、「横顔」というものは、正面の顔とは違って目を動かしたり表情を崩したりすることによるコミュニーションはやりにくい。

 正面から見た時のムロさんは、すぐおふざけしそうなオーラが漂っていて、目を剥いたりくりくりしてみたりしておどけた表情を作るのが得意です。ところが、横顔のムロさんには、全く違う印象がたしかにありました。

 動と静という対比でいえば、まさしく「静」。このドラマの成功の一因は、「横顔のムロツヨシ」の魅力を最大限まで活用したことにあったのではないでしょうか。単に横顔のショットの量が多かった、という意味ではなくて、ムロツヨシの「抑制の効いた静かな面が良い形で発揮された」という意味です。

「静」が良いと、自ずと「動」の方も際立つ結果になります。例えば、遺書の話を始めた尚に対して、突如こらえきれなくなった真司が感情を爆発させ「やめろ」と怒鳴るシーン。それまでが穏やかで抑制的だったからこそ、激しい「動」が迫力を持つ。あるいは、尚を相手にふざけたりする「動」的シーンも、照れ隠しや愛情表現として実にイキイキと立ち上がっていました。

 2つ目の魅力として、ムロさんの「やりとり力」が挙げられるでしょう。

 戸田恵梨香さんとムロさん、夫婦のやりとりは非常に魅力的でした。じゃれあったりイチャイチャしたり即興で言葉のかけあいをしている様子は、テレビを見ているこちらも思わずふっと笑いがこぼれ、幸せな気分に包まれたものです。そうした行為から「お互いを大事にしている」「二人でいると楽しい」という感覚がビンビン伝わってきました。尚役の戸田さんの演技もノッていましたが、戸田さんの演技にリアルに反応し、ビビッドに返すムロさんは益々輝いて見えました。

関連記事

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト