「人間が生まれ持った遺伝子が環境や生活習慣などによって変化することを『エピジェネティクス』と呼びます。遺伝子の変化を促す大きな要因となるのは幼少期の育て方で、お母さんが子供と長く接するほどよい影響が出やすい。

 たとえばうつ病になりやすい素質は親から子へ遺伝することがわかっていますが、仮に子供がうつ病になりやすい遺伝子を持っていても、母親が愛情深く接すれば、うつ病の発症率は低くなるとされます。子供がある遺伝的素質を持って生まれても、それが発現するかどうかは環境要因にも左右されるのです」

 子供の学力を測る主要なバロメーターは受験である。

「受験の神様」として知られ、何千組もの親子を合格へと導いてきた精神科医の和田秀樹さんは、これまでの経験を振り返り、特に受験における学力は遺伝と関係ないと断言する。

 大切なのは遺伝ではなく、情報収集能力だと言うのだ。

「学歴の高い親の子供がよい大学に合格できるのは、親が受験を経験していて受験テクニックに詳しいからです。たとえば子供が名門中学に合格したとして、親に偏差値の高い学校を目指した経験がない場合は、舞い上がって入学後の勉強を怠りがちですが、親が東大など有名校の出身であれば、自分の経験から『中1が勝負の時』と知っているから、入学後の子供にムチを打って勉強させます。

 こうした差がその後の進路に表れる。“東大出の子が東大生”という結果だけ見れば遺伝子次第に思えますが、実際にはただ勉強のやり方を知っているだけなのです」

 池田さんも、親の学歴が高いと子供の教育環境が整いやすいと指摘する。

「親が知的なタイプだと自宅には多くの本があり、子供は小さい頃から読書に慣れ親しみます。一方で親がテレビばかり見ている家庭では、子供の言語、思考の成長に差が出ることは明らかです」

 ポイントは単に親の学力が高いことではなく、愛情や受験技術まで含めたトータルの教育環境のようだ。確かに、母親の学力が高ければそれが子供に遺伝し、結果として子供の学力も高くなることはデータと研究に裏付けられた紛れもない真実だった。だが、その逆は成立しない。

 親が愛情を注いで接し、がんばったらほめる。そうすることで得意な能力をより伸ばすことができる。さらに、勉強に集中できる環境を整えてあげれば、子供は遺伝子に関係なく学力を伸ばす可能性は、存分にあるのだ。

「たとえよい遺伝子を持っていなくても、正しいやり方で勉強をがんばることができれば子供の学力は伸びるはずです。最も避けたいのは、“私に学力がないから何をしてもムダだ”と親がわが子の伸びしろを信じずにあきらめてしまうこと。そうした投げやりな態度こそが、子供の学力を決めてしまうのです」(和田さん)

 遺伝と学力の“不都合な真実”を知ったその日が、わが子の教育の“真のスタート”なのかもしれない。

※女性セブン2019年1月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカル
【ニコラス・ケイジと共演も】「目標は二階堂ふみ、沢尻エリカ」グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカルの「すべてをさらけ出す覚悟」
週刊ポスト
阪神・藤川球児監督と、ヘッドコーチに就任した和田豊・元監督(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督 和田豊・元監督が「18歳年上のヘッドコーチ」就任の思惑と不安 几帳面さ、忠実さに評価の声も「何かあった時に責任を取る身代わりでは」の指摘も
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン