「水道事業の独占により、料金が高騰した」
「水質の低下を引き起こし、環境悪化が進んだ」
「いったん民営化すれば自治体のノウハウが失われ、もとに戻せない」
といった塩梅だ。海外の事例を見ると、これらは単なる杞憂とも思えない。オランダの民間調査によれば、2000年以降の17年間、世界33か国267都市で水道事業が再び公営化されている。一方、政府は3例の海外の現地調査を実施したのみで、民営化に踏み切ろうとしているという。
いきおい臨時国会は揉めた。12月10日の会期末を控えた5日午後の衆院厚生労働委員会では、立憲民主党の初鹿明博が、水道民営化の旗振り役だった内閣官房長官補佐官にまで追及の矛先を向けた。
「公共サービス担当の補佐官である福田隆之氏が6月にフランスに出張した際、ヴェオリア社の副社長と会食し、スエズ社の用意した車を移動に使っていた。ワイナリーにも行っています。その件の報告を(内閣府に)求めたところ、いまだ報告がありません」
官房長官補佐官だった福田隆之は、コンセッション方式による水道民営化の仕掛人として、すっかり永田町で有名になった。繰り返すまでもなく、ヴェオリアとスエズは民営化後の日本市場への参入を虎視眈々と狙っている。
福田は水道の民営化を進める当事者でありながら、海外事業者から便宜を図ってもらっているのではないか──そんな趣旨の怪文書が出回っていた。
当の福田はコンセッションの民間有識者として政府の検討会に加わり、そこから官房長官補佐官に抜擢された異色の経歴を持つ。ところが、臨時国会が始まった直後の11月9日付で、唐突に補佐官の職を辞任。その原因が、この怪文書の流出ではなかったか、とも囁かれた。