「(国交省)大阪航空局が関係者連絡会議を開き、状況を整理して官邸にレポートしていました。そこで官邸側から『何、まごまごやってるんだ』という指示が飛んできたと聞いています。それを総理の発言が後押しした格好で、総理が言っているのに何やっているんだというシグナルのようなものでしょう」(同前)

 実は9月6日にも新千歳空港発の1便を関空に着陸させる計画だった。だが、同日に発生した北海道地震でそれを断念し、7日からの2期島滑走路の運航となったという。7日にはピーチの17便に加え、JALも2便が飛んだ。

 むろん1期島の滑走路や鉄道の復旧には時間を要したが、台風被害から3日目の空港再開については、まずまず評価が高い。しかし、それは民営化された関空エアポートが主導した作業ではない。関係者たちにとっては、むしろ足を引っ張られたというのが実感だという。

「災害対策を通じてわかったのは、日本のオリックスと外資のヴァンシの覇権争い。それは好きにしてくれていいけど、挙げ句、経営陣とこれまで働いてきた空港の専門スタッフとの意思疎通がまったくできてない。空港運営現場のリアリティを感じないのです」(同前)

 台風から3か月半経って災害レポートを発表した関空エアポート専務の西尾裕はこう言った。

「今度のレポートは最終形態の形をとっていますが、対策の詳細はこれから詰めていきます。最初に発表した滞留者の3000人は職員の目視で推計したものであり、8000人の内訳については調べていません」

 本格的な空港コンセッションの第一号事案として、インバウンド効果の強烈なフォローのおかげでようやく利益を出せるようになった関空。もとはといえば、官房長官補佐官に就任する前、福田が大阪府知事だった橋下徹にコンセッションの導入を働きかけて実現したものだ。そこから福田は補佐官として全国の空港民営化、さらに水道へと手を広げてきた。

 だが、民営化は魔法の杖ではない。赤字の公共事業に明るい未来が開けるわけでもない。

(敬称略、以下次号)

●もり・いさお/1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2018年、『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(文藝春秋)で「大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション」大賞を受賞。近著に『地面師』(講談社)。

※週刊ポスト2019年1月18・25日号

関連記事

トピックス

ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
今年6月に行われたソウル中心部でのデモの様子(共同通信社)
《韓国・過激なプラカードで反中》「習近平アウト」「中国共産党を拒否せよ!」20〜30代の「愛国青年」が集結する“China Out!デモ”の実態
NEWSポストセブン
裁判所に移されたボニー(時事通信フォト)
《裁判所で不敵な笑みを浮かべて…》性的コンテンツ撮影の疑いで拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26)が“国外追放”寸前の状態に
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《自宅でしっぽりオフシーズン》大谷翔平と真美子さんが愛する“ケータリング寿司” 世界的シェフに見出す理想の夫婦像
NEWSポストセブン
山上徹也被告が法廷で語った“複雑な心境”とは
「迷惑になるので…」山上徹也被告が事件の直前「自民党と維新の議員」に期日前投票していた理由…語られた安倍元首相への“複雑な感情”【銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカの人気女優ジェナ・オルテガ(23)(時事通信フォト)
「幼い頃の自分が汚された画像が…」「勝手に広告として使われた」 米・人気女優が被害に遭った“ディープフェイク騒動”《「AIやで、きもすぎ」あいみょんも被害に苦言》
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(時事通信フォト)
《潤滑ジェルや避妊具が押収されて…》バリ島で現地警察に拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26) 撮影スタジオでは19歳の若者らも一緒だった
NEWSポストセブン
山上徹也被告が語った「安倍首相への思い」とは
「深く考えないようにしていた」山上徹也被告が「安倍元首相を支持」していた理由…法廷で語られた「政治スタンスと本音」【銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
不同意性交と住居侵入の疑いでカンボジア国籍の土木作業員、パット・トラ容疑者(24)が逮捕された(写真はサンプルです)
《クローゼットに潜んで面識ない50代女性に…》不同意性交で逮捕されたカンボジア人の同僚が語る「7人で暮らしていたけど彼だけ彼女がいなかった」【東京・あきる野】
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(Instagramより)
「球場では見かけなかった…」山本由伸と“熱愛説”のモデル・Niki、バースデーの席にうつりこんだ“別のスポーツ”の存在【インスタでは圧巻の美脚を披露】
NEWSポストセブン
モンゴル訪問時の写真をご覧になる天皇皇后両陛下(写真/宮内庁提供 ) 
【祝・62才】皇后・雅子さま、幸せあふれる誕生日 ご家族と愛犬が揃った記念写真ほか、気品に満ちたお姿で振り返るバースデー 
女性セブン
村上迦楼羅容疑者(27)のルーツは地元の不良グループだった(読者提供/本人SNS)
《型落ちレクサスと中古ブランドを自慢》トクリュウ指示役・村上迦楼羅(かるら)容疑者の悪事のルーツは「改造バイクに万引き、未成年飲酒…十数人の不良グループ」
NEWSポストセブン