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鉄道における保安検査 五輪を機に日本でも導入されるのか

スペイン・マドリードのアトーチャ駅、手荷物検査ゲート

 飛行機に搭乗する前、空港で受ける金属探知機やX線検査などを利用した保安検査だが、近年、新幹線など鉄道への導入を望む声も上がっている。2020年東京五輪開催へ向けて強化される予定の鉄道における保安対策は、どうなるのか。ライターの小川裕夫氏が、日本での議論の行方と海外事例についてレポートする。

 * * *
 ここ数年、東海道新幹線では凄惨な事件が相次いでいる。

 2015年6月には自殺志願者が車内で焼身自殺を図り、巻き込まれた女性が死亡。2018年6月には、斧のようなものを持った犯人の凶行が起こる。このときは、応戦した乗客が死亡した。

 どちらの事件も大々的に報道されたため、東海道新幹線の運行事業者であるJR東海のみならず、政府・国土交通省や各鉄道事業者はテロを未然に防ぐための取り組みを加速させている。

 鉄道の車内は平穏が保たれ、乗客は快適かつ安全に移動することが約束されている。そんな車内で犠牲者を出す惨事が起きたことは、鉄道会社にとっても利用者にとっても、なにより国家にとっても見過ごすことはできない。

 空の便では国内線・国際線を問わず、身体検査・手荷物検査を厳重に実施。利用者の安全確保に努めてきた。

 他方、国内の鉄道事業者はテロを未然に防ぐための身体検査・手荷物検査を実施していない。飛行機とは異なり、鉄道は駅に着いたらすぐ乗車できる。それが鉄道のメリットでもある。身体検査や手荷物検査は、時間を要する。安全対策とはいえ、発車30分前に駅に到着してセキュリティチェックを受けることが義務づけられれば鉄道の利便性は失われてしまう。

 これまで、日本の鉄道ではテロが発生する危険性はきわめて低く、それゆえに鉄道業界は「鉄道の利便性を損なう」「駅スペースが狭い」「ラッシュ時間帯身体検査・手荷物検査を実施すれば、駅に人が溢れる可能性があり、その混雑が危険な状況を生む」との理由から身体検査・手荷物検査の実施には消極的だった。

 利用者の立場からも、新幹線に乗車するために駅に行って身体検査や手荷物検査で待たされるのは苦痛だろう。年末年始や夏休みの繁忙期は、それこそ1時間以上も待たされることを覚悟しなければならない。

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