ゴーン被告の華麗なる家族たち。邸宅も経費で購入したという疑惑も(時事通信社)
1つ目は、2010年からの5年間に100億円弱の報酬を日産から受け取っていたにもかかわらず、日産の「有価証券報告書」に50億円弱と虚偽の記載をし、提出したことが問題となっている。
2つ目の“会社の私物化”とは、2008年にゴーン被告の私的な投資で生じた約18億5000万円の損失を、日産に付け替えたというものだ。さらに、この取引に協力したサウジアラビア人の会社に、日産の子会社から約16億円を振り込ませたという疑いがかけられている。
ゴーン被告は、2017年まで日産の社長を務め、以降も会長の座に君臨してきた。でも、中小企業の社長が役員報酬が少なく見えるように細工したり、会社のお金で高級車を買ったり…というのはよく聞く話。なぜ大事件に発展してしまったのか。伊藤さんが解説する。
「日産は東証一部に上場する大企業です。株式会社であるため、何万人もの株主たちの投資によって成り立っています。彼らが投資をするときに参考にするのが『有価証券報告書』。そのため、報告書はすべてオープンに、偽りなく記載して提出しなければならないと法律で義務付けられていて、虚偽記載は刑事罰の対象になるのです」
また、伊藤さんは「逮捕の背景には、日本とフランスの自動車産業をめぐる国家レベルの“綱引き”がある」と指摘する。
「ビジネス上、ルノーと日産は対等関係にありますが、フランスのマクロン大統領は、日産をルノーの完全な子会社にすることを目論見ました。ルノーの筆頭株主はフランス政府であるため、絶大な影響力があるのです。マクロン氏は日産の自動車工場をフランスに造ることで雇用を生み出し、下落した支持率を回復させたかったんでしょう」
わが社がフランスに乗っ取られてしまう──危機的状況を察知し、動いたのが日産幹部だった。
「西川廣人社長以下、日産のプロパー社員たちが反抗。ゴーン氏の不正を告発し、東京地検特捜部に訴えました。地検は『司法取引制度』を適用。本来ならゴーン氏の不正に気づけず協力した日産幹部の責任も問われるはずですが、日産の刑事処分を軽くしてもらう代わりに、幹部が捜査に協力するという約束が交わされた。日本の大企業である日産が、フランスの企業になることを避ける政治的な目的で行われた “国策捜査”とも考えられます」(伊藤さん)
ゴーン被告の経営手腕は誰もが認めるところだ。今後、日産はどうなるのか。
「経営がクリーンになることは間違いない。ただ、大規模な工場の閉鎖やブランドイメージの一新などさまざまな方法で経営を回復したゴーン氏がいなくなったことで、収益を上げられなくなる可能性も示唆されています」(前出・記者)
それどころか、日産はゴーン被告から損害賠償請求される可能性すらあるという。
「裁判所から保釈請求が却下された上、ゴーン氏は容疑を否認しているため、あと数か月はこのまま拘留される見込みです。ですが、自己主張の強い人であるため、保釈されたら記者会見を開いて、法的な反撃に出ると見込まれています」(前出・記者)
※女性セブン2019年2月7日号
