中でも一番強かったのは貴乃花ですね。決定戦ではよく負けてしまいましたが、とにかく、こちらの得意な相撲をさせてもらえないんです。白鵬のように引いたり叩いたりしない、正面から受け止めて勝つ真の横綱相撲でした。支度部屋で自分の取組に合わせて気持ちを高めていくのがうまいし、その実力は彼の尋常ではない稽古量から生まれていたと思います。
当時はどの部屋も稽古をガンガンやっていました。武蔵川部屋には関取も多く、1日50番というのも珍しくありませんでした。今のお相撲さんの5倍はやっていましたよ。お陰でスタミナには自信があったので、決定戦は苦になりませんでしたがね。
今のお相撲さんは押し相撲や引き相撲が多く、見ていて面白くない。昭和で育った平成の前半と平成育ちの後半では、相撲は大きく変わってしまいました。
※週刊ポスト2019年2月1日号