1月21日、私は日本武道館に訪れ、8000円の当日券を買った。入場すると、1階席と2階席に縦に4ブロックずつ暗幕が掛けられていたが、それ以外はほぼ満員に。招待客の多さを伝える記事もあったが、ライブ中に会場を見渡すと、アリーナや1階はもちろん、2階席の6割から8割は拳を挙げるなどの曲中のフリを行なっていた。
もちろん、招待券で初めて訪れた人でも周りを見ればすぐにできる動作であり、これを理由に関係者多数説を否定することはできない。
だが、ライブが進むに連れて、曲中のフリをする人が増えていった。つまり、ジュリーは自らの力で観客を振り向かせていたのだ。
ワイドショーは観客を足し算ではなく、収容人員における割合で不入りかどうかばかり気にするが、仮に〈関係者4割〉という記事が本当だとして、その分を差し引いても4800~5400人は正規のチケットを購入している。
近年メディア露出を控えているにもかかわらず、なぜ沢田研二は70歳にしてこれほどの観客を集められるのか。私はその点に興味を持っていた。
この日も、日本レコード大賞を受賞し、NHK紅白歌合戦のトリを務めたこともある1970年代のヒット曲はほとんど歌わなかった。セットリストには、一般的には馴染みの薄い持ち歌ばかり組み込まれていた。
それでも、7か月に及ぶ全国ツアーで68公演を行ない、会場によっては数千もの人が埋まるのだ。