スポーツ

引退の稀勢の里、初場所後に見せた笑顔と後援会長の期待

引退の稀勢の里が見せた笑顔

 日本中の期待を一身に背負った元横綱・稀勢の里。その重圧はどれほどのものだっただろう。声援に応えるため、けがをかばいながら上り続けた土俵からついに降りる決意をした。激動の15日間を終えたとき、無口で愚直な男が見せたのはやさしい笑顔だった──。

◆部屋のため、協会のために尽力する それが親方としての仕事

「稀勢の里改め、荒磯と申します」。千秋楽の夜、新米親方は、ひと言、ひと言、言葉をかみしめるように話し始めた。

 再起を懸けて挑んだ大相撲初場所(1月13日~27日)で初日から3連敗を喫し、引退を決断した元横綱・稀勢の里。

 涙の引退会見の翌日には、事務手続きなどのため、両国国技館を訪れ、荒磯親方として親方デビュー。館内を歩いて回ると、たくさんのファンからは労いと感謝の言葉がかけられた。

 迎えた千秋楽。稀勢の里は、国技館を出ると、都内ホテルにて行われた「田子ノ浦部屋千秋楽祝賀会」へ向かう。

 冒頭のように、約500名の後援者を前に挨拶。「これからは後進の指導にあたり、田子ノ浦部屋のため、そして日本相撲協会のため、尽力していきたいと思います」と語ると、側で聞いていた大関・高安は思わず涙を…。

「(稀勢の里に)今まで教わったこと、相撲の姿勢、志を引き継いで、相撲道に精進していきたいと思います」

 目頭を押さえながら決意を述べる高安の姿に、会場の後援者たちももらい泣き。

 挨拶を終えると、稀勢の里は各テーブルをひとつひとつていねいに回り、後援者に謝辞を述べ、その後は2ショットの撮影会に。「勝っても負けても表情に出すな」という先代師匠(故・鳴戸親方)の教えを愚直に守り、“仏頂面が特徴”とまでいわれた稀勢の里だが、この日、集まってくれた後援者たちに見せたのはリラックスした笑顔。ファンを大切にしてきた稀勢の里らしさが随所に出る温かな会となった。

◆彼自身の努力でステップを重ねてきたこと それは今後の人生にもプラスになる

 15才で鳴戸部屋に入門し、幕内までは異例のスピード出世を見せたが、大関昇進は25才。2017年初場所で初優勝し、春場所で待望の“和製横綱”となったのは30才だった。その春場所の、横綱・日馬富士戦で負傷すると、その後は休場続きとなってしまった。在位中の勝率は5割、8場所連続休場など、横綱としては不本意だったかもしれない。けれども、最後まで横綱として土俵を務め上げた稀勢の里は、間違いなく「日本が誇る横綱」であった。

 稀勢の里を見守り、力強く応援し、支えてきた田子ノ浦部屋後援会会長の長谷川裕一さんは、こう期待を寄せる。

「大関から横綱になるまで、時間がかかった。けれども、彼自身の努力でそのステップを踏めたことは、今後の人生にプラスになるはず。その経験は指導者としても生きてくるだろう」

 荒磯親方として、稀勢の里の「第二の人生」はまだ始まったばかり。断髪式は9月29日、両国国技館で行われることも決まった。相撲を愛し、相撲に愛された横綱が新たな日本人横綱を生み、相撲界を盛り立てる様子に、これからも注目したい。

※女性セブン2019年2月14日号

関連記事

トピックス

イベント出演辞退を連発している米倉涼子。
《長引く捜査》「ネットドラマでさえ扱いに困る」“マトリガサ入れ報道”米倉涼子はこの先どうなる? 元東京地検公安部長が指摘する「宙ぶらりんがずっと続く可能性」
マンションの周囲や敷地内にスマホを見ながら立っている女性が増えた(写真提供/イメージマート)
《高級タワマンがパパ活の現場に》元住民が嘆きの告発 周辺や敷地内に露出多めの女性が増え、スマホを片手に…居住者用ラウンジでデート、共用スペースでどんちゃん騒ぎも
NEWSポストセブン
アドヴァ・ラヴィ容疑者(Instagramより)
「性的被害を告発するとの脅しも…」アメリカ美女モデル(27)がマッチングアプリで高齢男性に“ロマンス”装い窃盗、高級住宅街で10件超の被害【LA保安局が異例の投稿】
NEWSポストセブン
デビュー25周年を迎えた後藤真希
デビュー25周年の後藤真希 「なんだか“作ったもの”に感じてしまった」とモー娘。時代の葛藤明かす きゃんちゅー、AKBとのコラボで感じた“意識の変化”も
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト・目撃者提供)
《ラブホ通い詰め問題でも続投》キリッとした目元と蠱惑的な口元…卒アル写真で見えた小川晶市長の“平成の女子高生”時代、同級生が明かす「市長のルーツ」も
NEWSポストセブン
亡くなった辻上里菜さん(写真/里菜さんの母親提供)
《22歳シングルマザー「ゴルフクラブ殴打殺人事件」に新証言》裁判で認められた被告の「女性と別の男の2人の脅されていた」の主張に、当事者である“別の男”が反論 「彼女が殺されたことも知らなかった」と手紙に綴る
NEWSポストセブン
ものづくりの現場がやっぱり好きだと菊川怜は言う
《15年ぶりに映画出演》菊川怜インタビュー 三児の子育てを中心とした生活の中、肉体的にハードでも「これまでのイメージを覆すような役にも挑戦していきたい」と意気込み
週刊ポスト
韓国の人気女性ライバー(24)が50代男性のファンから殺害される事件が起きた(Instagramより)
「車に強引に引きずり込んで…」「遺体には多数のアザと首を絞められた痕」韓国・人気女性ライバー(24)殺害、50代男性“VIPファン”による配信30分後の凶行
NEWSポストセブン
田久保市長の”卒業勘違い発言”を覆した「記録」についての証言が得られた(右:本人SNSより)
【新証言】学歴詐称疑惑の田久保市長、大学取得単位は「卒業要件の半分以下」だった 百条委関係者も「“勘違い”できるような数字ではない」と複数証言
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン
バラエティ番組「ぽかぽか」に出演した益若つばさ(写真は2013年)
「こんな顔だった?」益若つばさ(40)が“人生最大のイメチェン”でネット騒然…元夫・梅しゃんが明かしていた息子との絶妙な距離感
NEWSポストセブン
ヴィクトリア皇太子と夫のダニエル王子を招かれた天皇皇后両陛下(2025年10月14日、時事通信フォト)
「同じシルバーのお召し物が素敵」皇后雅子さま、夕食会ファッションは“クール”で洗練されたセットアップコーデ
NEWSポストセブン