この保護者同様、多くの父母は今回の事件について、「何が起きたかわからない」「知らない」を繰り返す。言葉を濁す様子も見られたが、報道があるまで、何が起きていたか知り得なかったという反応も多かったのが印象的だった。
父母からの強い要請もあり、Aちゃんが通っていた小学校では、1月31日にようやく保護者説明会が開かれた。同校の校長は、その席上でAちゃんへの哀悼の意を表しつつ、彼女が亡くなる9日前に写生大会で賞を獲得して笑顔を浮かべていたことを公にするなど、異変に気がつくことが難しかった旨を語った。
ならばなぜ母娘は命を落としたのか──謎は深まるばかりだったが、取材を続けるうちに本誌・女性セブンは、Aちゃんの母親が亡くなる直前まで書き続けた日記やメモなどを入手した。
そこには、娘が受けたいじめと学校の対応、揺れ動く母親の気持ちなどがワードや鉛筆で数か月にわたって、詳細に記録されていた。
それによると、両親が最初に異変を感じたのは2018年5月。同級生たちと登校中のAちゃんがそのうちの1人からアサガオの支柱で叩かれそうになり、怖くてひとりで登校したことが発端だった。
これがきっかけとなりAちゃんは小1の頃から、登校する際に同級生たちに置いていかれたり、「あれ取ってきて」と家来のように扱われたりしていたことがわかった。
寝耳に水だった両親が急いで学校に連絡すると、学年主任や担任が立ち合いのもと、該当児童たちを集めて握手させる「仲直りの会」が開かれた。
だが幼い子らの諍いは一件落着とはならず、母親が遺したメモによると、その後もAちゃんをじっとにらんだり、無視やヒソヒソ話をしたりすることが続き、ショックを受けたAちゃんは学校に行けなくなったという。元小学校教員でITジャーナリストの高橋暁子さんが言う。
「小学校低学年のいじめは、児童がまだうまく説明ができなかったり、同じ発言や行動でも児童によって感じ方が大きく違ったりするため、把握や解決が難しい。特に、物を盗られたり壊されたりLINEで悪口を言われたりといった、証拠が残るようなことでなかった場合、いじめた方も、自覚がない場合もあります」
そんな状況で、“仲直り”をするのは、時と場合によっては逆効果になることもある。
「学校では、よく教師主導で“当事者同士が握手をして終わり”という方法で一件落着させようとしますが、これで解決したためしがありません。いじめられた、いじめた、とお互い疑心暗鬼になっている子供たちを教師がとりもって、仲直りさせることでさらにこじれてしまったケースをこれまで何度も見てきた。子供同士だからこそ、一度こじれてしまった仲は、自分たちでは簡単には戻らないのです」(ある現役教員)