国内

内視鏡、骨粗しょう症、認知症などの検査は受けなくてもよい?

世界基準でみた「ムダな医療」一覧

「チュージング・ワイズリー(choosing wisely)」と呼ばれるムーブメントが海外では起きている。これは、“ムダな医療、有害な医療をなくそう”という一大キャンペーンである。そうした流れが日本でも起きつつある。

 例えば、大腸がんは、日本人女性の死因1位。がんがないか、こまめにチェックしたいところだが、アメリカでは大腸内視鏡の検査は、10年に1回でいいとされている。

 チュージング・ワイズリーに詳しい医療経済ジャーナリストの室井一辰さんはこう語る。

「過去にポリープが見つかったなど、リスクがある人は、5年に1回。健康な人は10年に1回受ければ、寿命に影響しません。大腸がんは進行が遅いうえ、肺や肝臓などと違い、内視鏡で直接内部をチェックできるので、見落としも少ないのです」

 また、卵巣がん検診で行われることが多いのは、経腟エコー検査と、腫瘍マーカー「CA125」を調べる血液検査。チュージング・ワイズリーにおいて、これらは「害を及ぼす検査の典型」だという。

「卵巣がんの発見は難しく、検診で早期に発見できた、死亡率が低下した、というデータはありません。それどころかがんと誤診され、不要な手術を受けるリスクさえあるのです。腹部が痛い、不正出血が続くといった自覚症状がある人以外は受けない方がいい」(室井さん)

 卵巣がんと同じく、女性特有の病気であり、こまめな測定が必要になると思われている骨粗しょう症。しかし、世界基準においてはそうではない。室井さんが解説する。

「骨密度検査はX線を用いたDEXA法が一般的。この検査は、10年に1回受ければ充分だとされている。そのうえ女性は閉経後に骨密度が下がるとはいえ、すぐに骨粗しょう症になることはなく、数年で急激に悪化することもないと証明されている。そのため、65才以下は受ける必要がありません」

 アメリカ在住の内科医・大西睦子さんも声をそろえる。

「骨密度の減少が極端に進行している人は別ですが、一般的な数値の女性は骨粗しょう症が発生するのに15年かかるという研究結果が、2012年に米ノースカロライナ大学の研究で明らかになっています」

 さらに、高齢化により2025年には700万人を超えるとされる認知症。

 内閣府の高齢社会白書によると、2030年には65才以上の5人に1人が認知症になると予想されている。認知症もがんと同じく早期発見が推奨されるが、その診断は慎重に行うべきというのが米国学会の考え方だ。

「認知症と間違われやすいのは、高齢者に多い『せん妄』。薬の副作用などで精神状態が急に変化して思考が混乱し、異常行動をとることがあります。米国看護学会によれば、せん妄の9割が認知症と誤解されているので、異常行動を認知症と決めつけないよう注意すべきなのです。

 認知症検査の多くは『今日の日付はわかりますか?』といった質問形式で、回答次第では医師でも認知症だと誤診することがある。検査結果をうのみにせず、疑ってみる姿勢も必要です」(室井さん)

関連記事

トピックス

大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
高羽悟さんが向き合った「殺された妻の血痕の拭き取り」とは
「なんで自分が…」名古屋主婦殺人事件の遺族が「殺された妻の血痕」を拭き取り続けた年末年始の4日間…警察から「清掃業者も紹介してもらえず」の事情
(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
熱を帯びる「愛子天皇待望論」、オンライン署名は24才のお誕生日を節目に急増 過去に「愛子天皇は否定していない」と発言している高市早苗首相はどう動くのか 
女性セブン
「台湾有事」よりも先に「尖閣有事」が起きる可能性も(習近平氏/時事通信フォト)
《台湾有事より切迫》日中緊迫のなかで見逃せない「尖閣諸島」情勢 中国が台湾への軍事侵攻を考えるのであれば、「まず尖閣、そして南西諸島を制圧」の事態も視野
週刊ポスト
盟友・市川猿之助(左)へ三谷幸喜氏からのエールか(時事通信フォト)
三谷幸喜氏から盟友・市川猿之助へのエールか 新作「三谷かぶき」の最後に猿之助が好きな曲『POP STAR』で出演者が踊った意味を深読みする
週刊ポスト
ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
今年6月に行われたソウル中心部でのデモの様子(共同通信社)
《韓国・過激なプラカードで反中》「習近平アウト」「中国共産党を拒否せよ!」20〜30代の「愛国青年」が集結する“China Out!デモ”の実態
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《自宅でしっぽりオフシーズン》大谷翔平と真美子さんが愛する“ケータリング寿司” 世界的シェフに見出す理想の夫婦像
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(時事通信フォト)
《潤滑ジェルや避妊具が押収されて…》バリ島で現地警察に拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26) 撮影スタジオでは19歳の若者らも一緒だった
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
NEWSポストセブン