平成の世を通じ、天皇は象徴天皇としてあるべき姿を模索してきた。だが、歴史を俯瞰すれば、天皇の意思に反して時の権力者が都合のよい天皇像を作り上げた時代も少なくない。“ポスト平成”に天皇像はどう変化するのか。現代史の専門家・秦郁彦氏と中世史の専門家・本郷和人氏が歴史を踏まえて考察する。
秦:天皇の権威は現在まで続いているわけですよね。アメリカでさえ、天皇制をなくさなかった。戦後憲法でも、国家の象徴としての地位を与えられました。
本郷:その憲法を安倍内閣は改正しようとしていますが、もし改憲が行われたら天皇の地位は変わると思われますか? たとえば明確に「元首」に戻るとか。
秦:表向きにはしないでしょう。ただ、事実上の元首として扱う。いまでも諸外国が天皇を元首と見なしたときに、政府はわざわざ否定しませんよね。
本郷:これまでの歴史を踏まえても、天皇陛下の存在は現在の象徴という形がピッタリ合うんですよね。天皇が先頭に立って政治をやろうとすると、あまりよろしくないんです。
秦:自らの発意で天皇親政をやろうとしたのは後醍醐天皇ぐらいでしょう。
本郷:あとは後鳥羽天皇もそうですね。