贈与税には20年以上連れ添った夫婦間で自宅を贈与する時に2000万円まで非課税(控除)になる通称「おしどり夫婦特例」がある。だが、このケースのように自宅の資産価値が4000万円あると控除額を大きく超え、695万円の贈与税がかかるのだ。
通常の相続を選べば相続税は60万円の税金で済むはずが、配偶者贈与を利用すると税金は10倍以上になってしまうのである。
相続ルールの改正前に押さえておきたいのは、「配偶者居住権」と「配偶者贈与」は、必ずどちらかを選ばなければならない、というものではないことだ。円満相続税理士法人代表の橘慶太氏が語る。
「2つの新ルールは基本的には相続人の間に係争があるケースを前提に配偶者の権利を守る制度です。遺産分割が円満に行なわれるのであれば、現行制度でも自宅を妻と子供たちの共有名義にして妻がそのまま住み、金融資産も分割相続することができる」
税制面で不利なら新制度を使わない選択肢もある。
※週刊ポスト2019年3月8日号