38度線を突破して破竹の勢いで釜山付近まで侵攻した北朝鮮軍だが、1950年9月15日、国連軍の仁川(インチョン)上陸作戦が成功すると戦局は一転した。

 しかし、韓国軍だけでなく10月9日には国連軍が38度線を突破して北上を続けたことで、金日成の要請を受けた中国は開戦前の約束どおり(米国との衝突を避けるため参戦に消極的だった中国は、国連軍が38度線を越えたら参戦することを約束していた)、中国人民義勇軍の派遣を決定した。

 1950年7月、韓国の李承晩大統領はマッカーサー国連軍司令官に、韓国軍の指揮権を委譲する書簡(大田協定)を送った。米軍の本格介入により劣勢になった北朝鮮側に、1950年10月から中国の義勇軍が参戦した。

 このため、戦局は二転三転するが、結局、1953年に休戦協定が結ばれる。米韓両国政府の資料では、韓国兵約13万8000人、米兵約3万7000人が死亡。民間人や北朝鮮・中国側にも多大な被害が発生した。

◆休戦後も続いた戦闘

 限定された地域における小規模な戦闘だけでなく、北朝鮮側の強硬姿勢により「第2次朝鮮戦争」が勃発しかねない、一触触発の危機(いわゆる北朝鮮危機)もあったのだが、結果的に戦争は回避されてきた。韓国では非武装地帯の境界線を戦線や前線と表記しているが、まさに戦闘の最前線だった。

 朝鮮戦争休戦後に行われた、北朝鮮軍による米軍および韓国軍に対する軍事行動の特徴は、非武装地帯付近やその延長線上の海域における、小規模な火力によるものだった。そして、北朝鮮軍の攻撃は限定されたものであり、正規軍が侵攻する前に行うような組織的な攻撃ではなかったことだ。

 ともかく、全面戦争(第2次朝鮮戦争)勃発には発展しなかった。米国は北朝鮮に対して核兵器の使用を検討したことが何度かあるが、その案は却下された。米国にとって、あまりにも損害が大きいハイリスクな選択肢だったからだ。

 例えば、1994年に北朝鮮の核開発に対応するため、ペリー国防長官とシャリカシュビリ統合参謀本部議長、ラック在韓米軍司令官が「第2次朝鮮戦争」勃発時の被害予想を検討した。結果は、最初の3か月で米軍8万ないし10万人と韓国軍50万人が死傷し、全面戦争となれば死者は100万人、損害総額は1兆ドルという途方もないものだった。

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