それから1年──。この歯科医に直接話を聞きたいと思い、船橋市の歯科医院を訪ねたが、人けはなかった。壊れたまま放置された看板が、荒んだ雰囲気を醸し出す。派手だった歯科医の暮らしぶりからすると、歯科医院は随分と質素な外観だ。
同じ歯科医が県内で経営する他の2か所も同様の状況だった。千葉市内の歯科医院は、さらに小さくて狭い建物で、誰かが侵入したのか、ドアのガラスが割れたまま放置されている。
「知り合いの母親が通院していたけど、“何度もしつこくインプラントを勧められて通うのをやめた”と言っていた」(近隣の理容店主)
外房の九十九里浜に近い、東金市の閑静な住宅街に建つもう1軒も、駐車場に埃をかぶったベンツが2台あるだけ。オープンカーの後部には異様なほど大きな傷が付き、タイヤはパンクしていた──。
この歯科医の財務状況を調べると、2017年11月、東京簡易裁判所が彼の所有する不動産について、仮差し押さえ命令を出していた。
推定約1億7000万円の借入金があったという。以降、銀行や保証協会が次々に債権の回収に乗り出し、昨年12月には、競売にかかっていた歯科医の自宅が売却された。
このケースからは、「金額が大きい治療費の前払い」が重大なリスクをはらんでいることが浮き彫りになる。
◆これからどんどん潰れる