【2】強いテーマ性の提示
牧場主・柴田泰樹(草刈正雄)は、引き取った孤児のなつを「赤の他人」と突き放す。その上で、自分の弟子として酪農の厳しい仕事をたたき込む。なつが搾乳した牛乳と、農場で採れた卵で作ったアイスクリームを2人で味わうシーンは印象的でした。
「おまえが搾った牛乳から生まれたものだ。よく味わえ。ちゃんと働けば、ちゃんといつか報われる日が来る」
「無理に笑うことはない。謝ることもない。おまえは堂々としてろ。堂々と、ここで生きろ」
孤児の女の子に向かって「無理に笑うことはない」「堂々と生きろ」と語りかける言葉は、視聴者の胸に刺さり、強く揺さぶりました。ネット上には、セリフに泣いたという感想が溢れました。開始からすぐ、全体を貫くテーマがこれほど力強く明示された朝ドラって、これまでにあったでしょうか?
誰にも依存せず、自分で働き堂々と胸を張って生きていく。骨太であまりにまっとうで、清々しいテーマです。今後のなつの人生には波乱もあるでしょう。成長し変化しながらも「誇り高く前を向いて生きる」というテーマ性はきっと貫かれていくことでしょう。
【3】セリフの説得力が違う役者力
泰樹を演じる草刈正雄さんは「堂々と生きていけ」というセリフを、声を張り上げるのではなく落ち着いて淡々と語りました。この役者だからこそ静かな言葉が染み入るように響く。人生の酸いも甘いも経験し生きる哀しさを知っている役者だからこそ。その説得力たるや半端ではありません。
主人公・広瀬すずの演技を見る前に、ここまで満足させられるとは。さあ、いよいよ来週から大きく展開していくなつの物語。その羽ばたきを応援します。