しかし牝馬限定路線に反発するかのように、翌9年にエアグルーヴが天皇賞(秋)を牝馬として17年ぶりに勝つ。ジャパンカップでも日本馬最先着の2着に入り、この年牝馬として26年ぶりの年度代表馬に選出された。

 この後、平成中期(10年代)は、サンデーサイレンス牡馬や外国産馬に押され、男勝り牝馬の活躍は数えるほどだったが、平成後期になってからはウオッカ、ブエナビスタ、ジェンティルドンナが入れ替わりで古馬戦線の主役に君臨、平成後期10年のジャパンカップでは牝馬が6勝と牡馬を上回り、年度代表馬も5回受賞した。

 さて、そんな未来の女傑になろうかという3歳牝馬による今週のフローラS(平成12年までは4歳牝馬特別)だが、残念ながらこのレースで出走権を得てオークスを制したのはレディパステルとサンテミリオンの2頭だけ。平成では1番人気が10勝2着7回と堅実そうに見えるレースだが、一筋縄ではいかない。

 ダービーのトライアル青葉賞は2着まで、プリンシパルSにいたっては1着だけしか権利を得ることができないが、オークストライアルのフローラSではかつて3着までに出走権が与えられていた(昨年から2着までに優先出走権)。1、2着をめざすためには勝つための乗り方を考えなければならないが、3着狙いでよいのなら、また別の乗り方があり、そのために紐が荒れてきたのかもしれない。

 昨年は1番人気のサトノワルキューレが強い競馬で勝ったが、2着には13番人気パイオニアバイオが入って、馬連は万馬券となった。三連単の発売が始まった平成17年以降、1万円以下は1回だけ。100万馬券が2回、ここ3年はいずれも二桁人気馬が絡んで22万、39万、11万と荒れている。

 GIIでありながら1勝馬が10勝。未勝利を勝った次のレースで馬券に絡んで高配当をもたらしたケースも目立つ。1つミッションをクリアして肩の荷が降りたところで、思い切った乗り方を目論むことができるとも考えられる。

 人気はOP勝ちのあるウインゼノビアやヴィクトーリアなど500万条件を勝っている馬に集まりそうだが、重賞4着があるシャドウディーバやパッシングスルー、もしかしたらとんでもない大物かもしれないセラビアといったところも穴人気になりそう。

 高配当を出しているのは、むしろ前走条件戦で敗れているキャリア豊富な馬。とくに愛馬会(クラブ)所属馬はこの先新規募集を控えて「オークス出走」という実績を作りたいところ。フォークテイルやレオンドーロあたりがパドックで気持ちよさそうに歩いていたら、連下につけておくというのもいいかもしれない。

●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター

※週刊ポスト2019年4月26日号

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