──羽田は、それを鵜呑みにして総辞職したのか。
小沢:不信任しておきながら、次は入れるなんて、嘘に決まっています。僕は羽田さんに「そんなことあり得ない、馬鹿じゃないか」って言ったんだけど……。
〈羽田内閣の退陣後、自民党は社会党党首の村山富市を首班に担ぐ。小沢ら非自民勢力は、自社連立に反対して自民党を離党した海部俊樹を擁立し、首班指名選挙にもつれ込んだ。2年前の与野党が入り乱れて手を結ぶ、異例の構図だ。小沢は自民党と社会党が組むことを想定していたのか。〉
小沢:話は聞いていましたが、あり得ないと思っていました。驚くべきことです。まぁ、昔から裏(国会対策)では「なあなあ」でやってきた関係だったんだけれども、表向きは対立をしてきた。だから、いくら何でも表で組むとは思ってもいませんでした。
── 一方、あなたは海部を立てた。
小沢:羽田さんをもう一度担ぐ道は総辞職の時点で消えていました。社会党が自民党に取り込まれた以上、自民党を割る以外に政権を取る手段はない。すると、西岡武夫さんが「海部さんはどうだ」と。海部さんは「政治改革しようとしたが実現できずに辞任した」という立場だから、「本人が承知してくれるならよかろう」となった。
ところが、なかなか返事がない。国会会期の終わり間際になってようやく、海部さんから「受ける」という返事が来た。自民党では中曽根康弘さんはじめ「社会党の総理なんてとんでもない」という意見が多かったから、切り崩しの時間がもう少しあれば勝てた。早く海部さんが(離党の)腹を決めてくれてたら……ね。