芸能

松坂桃李の進化 恋愛ドラマ&時代劇で「腹をくくった」演技

『パーフェクトワールド』での演技が話題の松坂桃李

 役者・松坂桃李の進化が止まらない。主演する話題のドラマ、映画で今までにない魅力を開花させている。松坂の光る演技について、コラムニストのペリー荻野さんが解説する。

 * * *
 今期の松坂桃李を見て思うのは、「平成おとな二枚目の代表となるべく、腹をくくった」ということである。

 放送中の『パーフェクトワールド』は、事故により車椅子生活になった青年・樹(松坂)と高校の同級生・つぐみ(山本美月)との恋物語。相手を幸せにできないから恋愛はしないという樹と、下半身の感覚が失われているために排泄で下着を汚したり、傷の痛みに気づかず感染症になりかかったりする樹の現実に戸惑いながらも一途に彼を思うつぐみ。いじらしいったらありゃしない。少し前なら月9枠のドラマだよなと思わせる。堂々の美男美女ラブストーリーである。

 一方、5月17日公開の映画『居眠り磐音(いわね)』の松坂もまた熱烈に恋する男だ。松坂が演じるのは、若き浪人・坂崎磐音。いかにものほほんとした穏やかな男だが、実はすごい剣の遣い手。剣の師匠(佐々木蔵之介)が「眠っているのか、起きているのか…居眠り剣法」と呼ぶ、不思議な強さを持っているのである。そんな彼には、わけあって許嫁、奈緒(芳根京子)の兄を斬り、九州豊後関前藩士の身分を捨てて江戸に出てきたという悲痛な過去がある。用心棒として働きながら、眉毛をとがらせた悪徳商人(柄本明)らがからむとんでもない陰謀に立ち向かう磐音だが、心の中にはいつも奈緒の姿が…。またまたいじらしいったらありゃしない。ちなみにこの映画の主題歌はMISIAでタイトルは『LOVED』。愛ですよ、愛!

 思えば、2016年、まだ平成が終わるとは思ってもいなかったころ。松坂は宮藤官九郎作のドラマ『ゆとりですがなにか』に童貞の小学校教師・山路として登場。最終回、悩みながらも保健体育の授業で性教育する場面に心打たれると同時に、平成に大人になったゆとり世代も、人生と格闘しているのだと改めて思ったものだ。また、松坂は、舞台と映画になった『娼年』では、さまざまな女性の相手をする若き娼夫に。このままひねりを利かせた個性派俳優になっていくのかと思ったところに、『わろてんか』『この世界の片隅に』の若き旦那さん役時代を経て、今年、王道ラブストーリーに名乗りを上げたという印象だ。

 坂崎磐音に関して言えば、実はとても難しい役なのである。ふだんのおっとりした顔と剣豪の顔、ふたつを持ち合わせ、なおかつ、一番強烈な剣の場面でも、鋭くなるどころか、ゆるりと居眠りしたように見せねばならない。映画の中でも、悪侍が人を傷つけるのを見て、「某が相手をいたそう」と剣をとると、町人たちが「えーっ」と磐音を心配するほど。江戸のファッションリーダー、トップ花魁の高尾太夫からは「かわいらしい用心棒」とまで言われるのだ。その甘さと一閃!の剣の強さ。そうです。このギャップこそが、磐音の魅力。松坂はそれを十分、承知の上で磐音として登場したのだ。

『パーフェクトワールド』、『居眠り磐音』ともに原作の愛読者が多いだけに、覚悟もいっただろう。腹をくくった平成おとな二枚目として、江戸でも東京でも恋する松坂桃李。なかなかいい図である。

関連記事

トピックス

高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《輝く金髪姿で再始動》こじるりが亡き夫のサウナ会社を破産処理へ…“新ビジネス”に向ける意気込み「子供の人生だけは輝かしいものになってほしい」
NEWSポストセブン
中国でも人気があるキムタク親子
《木村拓哉とKokiの中国版SNSがピタリと停止》緊迫の日中関係のなか2人が“無風”でいられる理由…背景に「2025年ならではの事情」
NEWSポストセブン
トランプ米大統領によるベネズエラ攻撃はいよいよ危険水域に突入している(時事通信フォト、中央・右はEPA=時事)
《米vs中ロで戦争前夜の危険水域…》トランプ大統領が地上攻撃に言及した「ベネズエラ戦争」が“世界の火薬庫”に 日本では報じられないヤバすぎる「カリブ海の緊迫」
週刊ポスト
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
新大関の安青錦(写真/共同通信社)
《里帰りは叶わぬまま》新大関・安青錦、母国ウクライナへの複雑な思い 3才上の兄は今なお戦禍での生活、国際電話での優勝報告に、ドイツで暮らす両親は涙 
女性セブン
東京ディズニーシーにある「ホテルミラコスタ」で刃物を持って侵入した姜春雨容疑者(34)(HP/容疑者のSNSより)
《夢の国の”刃物男”の素顔》「日本語が苦手」「寡黙で大人しい人」ホテルミラコスタで中華包丁を取り出した姜春雨容疑者の目撃証言
NEWSポストセブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン