「専門医に向けた学会や講演会などで、製薬会社が医師に新薬の治療成績についての説明を依頼し、その“謝礼”として多額の講師謝金を支払うことがあります。その道の権威が新薬の効果を説明すれば、格好の宣伝になり、『あの先生が説明するのだから使ってみるか』という医師も出てくるので製薬会社のメリットは大きい。
そのため1~2時間程度で行われる講演の謝金相場は、大学教授や病院長クラスだと10万円を超え、遠隔地で開かれると旅費や宿泊費、飲食費などの諸経費を製薬会社が持ちます」(谷本さん)
処方薬のなかでも製薬会社のうまみが格段に大きいのは「生活習慣病」の薬だ。
「特に高血圧や糖尿病の薬は一度のみ始めると生涯にわたって服用するケースが多く、製薬会社のメリットが大きい。また、ただちに死に至るような重篤な状態で病気が見つかることは滅多にないため、生活習慣病は診断基準があいまいです。裏を返せば、基準値をどこに置くかで患者として薬をのむ人数は大きく変わる。製薬会社としてはなるべく基準を低く設け、患者数を増やしたいのが本音でしょう」(谷本さん)
実際、今年4月に日本高血圧学会による高血圧治療ガイドラインが5年ぶりに改訂され、合併症のない75才未満の成人の降圧目標が従来の140/90mmHg未満から130/80mmHg未満に引き下げられたばかりだ。
「大きな問題は、そうした病気の診断基準を定めるガイドラインを作成する大学教授などに、製薬会社が多額の資金を提供するケースがみられることです。これによって製薬会社に有利なガイドラインが作成されて生活習慣病関連の薬の売り上げに貢献していないか、しばしば議論されます」(谷本さん)
※女性セブン2019年5月23日号