もし、いま田中角栄が政治を動かしていたら、安倍首相の無策を嘆き、平成時代の「空の色を変える」ような政策を断行したに違いない。すなわち、発想を完全に逆転し、地方への交付金や補助金のバラ撒きをストップして、成熟期にふさわしい真の地方自治=道州制を目指したのではないだろうか。言い換えれば、中央集権から真の地方自治への組織運営体制の大転換である。
いま世界で繁栄しているのは国単位ではない。メガシティ、メガリージョンである。したがって、日本は国土の均衡ある発展や総花的な地方創生を目指すのではなく、まずメガシティの東京をもっと自由にして、東京一極集中をさらに加速させるべきである。その一方で、地方に世界中からヒト、モノ、企業、カネ、情報を呼び込むために、道州制を導入して、都道府県を人口1000万人くらいの組織運営単位に造り替え、自治権を与えていく。
たとえば「関西道」は、陸路でも片道3時間以内で移動できるコンパクトな地域にカナダと同規模のGDPを有する経済圏となるし、博多から鹿児島まで新幹線で1時間半の九州は、すでにインバウンド需要を取り込んでメガリージョンとして成長する絶好の条件を備えている。北海道や四国は、自治権を与えればその地域的な特性に合わせてデンマークやスイス、ニュージーランドなどをモデルにした「クオリティ国家」(*)を目指して蘇ることができるはずだ。
【*:大前氏が提唱している新国家モデル。人口が300万~1000万人、1人あたりGDPが400万円以上で、世界の繁栄をうまく取り込んでいる。典型は、スイス、デンマーク、シンガポール、フィンランドなど】
結局、これから日本が繁栄するためには、私が平成元年に提案した「平成維新」を、そっくりそのまま令和時代の政策に移植すればよいのである。それが「令和維新」となるのだ。