──事件の前は自宅にいたのでしょうか。
「ほとんどいません、今はいない」
──ご一緒には暮らしてなかったんですか。
「暮らしてるっていうものじゃないですね」
──どういう関係ですか?
「何だろう。いいじゃないですか、どういう関係でも」
その後、記者の話を断ち切るように電話は切れた。父親と思われた年配の男性から聞こえてくるのは、岩崎容疑者との“近くて遠い距離”を窺わせる言葉ばかりだった。近所に住む50代男性の証言がそれを裏付ける。
「隆一は僕の5歳年下で、昔は遊んだこともあります。その頃は隆ちゃんと呼んでいて、大人しい子でした」
男性は続けて、地元ではそれなりの名士だという岩崎家の事情を明かした。
「今あそこに隆一と住んでいるのは、彼の伯父伯母にあたる夫婦です。あの家は50年以上前からあって、このあたりではかなり古いほう。以前は隆一の祖父母と伯父伯母、その子供たちで住んでいた。隆一は別の場所で両親と住んでいましたが、隆一のおばあちゃんが一家について絶大な力を持つ厳しい人で、隆一のお母さんと折り合いが悪く、やがて両親は離婚することになった。おばあちゃんは、僕らが野球してて家にボールが入ったら怒鳴り散らされたり、このあたりでは恐れられていた存在でした」