「トランプとボルトンの意見は食い違っており、いつボルトンが切られるかわからない。そうなったとき、安倍首相はどうするか。米国政府内にブレーキ役がいなくなると、日本だけで強硬路線を押し通すのは難しい。トランプの思惑通り、日本は米国の財布となって拉致交渉の進展がないのにカネを払わされる方向に向かいかねない」(天木氏)
今回の来日でトランプ大統領が護衛艦「かが」の艦上で安倍首相を横に立たせて訓示したことも、天木氏は「金正恩に『日本は安全保障で完全に米国の支配下にある。日朝交渉も米国に追随する』と印象づけたのではないか」とも指摘する。“トランプを籠絡すれば安倍は落ちる”と足元を見られたとするなら、外交的不利は否めない。
◆「意表を突く要求」をされたら……
日朝の秘密交渉の危険性を指摘するのは外務省OBの末松義規・衆院議員(立憲民主党)だ。
「外交交渉には表にはできない奥深い部分がある。ありていに言えば、今回は安倍首相から金正恩委員長に拉致被害者の帰国問題も含め“会いたい”と言っている。だとすれば、北は何らかの対価を求めてくる。
とくに金正恩はいま現金を欲しがっている。北朝鮮は食糧難だから、韓国は開城工業団地開発の代金をコメなら2倍で払うと申し入れたが、北は『現金がいい』と断わった。金正恩委員長は党や軍の幹部など周辺にカネを配ることで体制を守ってきたが、金一族の専用資金が少なくなっているという分析がある。だから国民の食糧より、自分の体制を守る現金が欲しい」