「北朝鮮国内は今年深刻な食糧危機にある。安倍首相が『無条件で』と言っても、北は首脳会談の条件として15年前の約束不履行の清算を要求している。食糧など人道援助であれば経済制裁の対象外だから出せないことはないが、支援の内容をめぐって水面下の折衝が行なわれている」
会談前に金正恩との“面会料”を請求されているというのだ。さらに首脳会談が実現して日朝交渉が本格化すれば、「2兆円」ともいわれる戦後補償問題が控えている。
元駐レバノン大使の外交評論家・天木直人氏は「日本の戦後補償のカネが欲しい北朝鮮は、今後の交渉を戦後補償とパッケージで進めようとするはずです。日本側にとっても、経済支援を拉致交渉のカードに使うのは当然の外交手法ではある」と語る。
ただし、その際に危惧されるのは「トランプ大統領と金正恩が阿吽の呼吸で日本にカネを出させようと手を組むことだ」として、天木氏はこう指摘した。
「ポイントになるのは米国のボルトン大統領補佐官の去就です。ホワイトハウス内では北朝鮮との関係改善に積極的なトランプ大統領に対して、対北朝鮮強硬派のボルトンがブレーキ役となっている。日本の外交はそのボルトンと足並みを揃えて強硬路線を取ってきた」
実際、今回の北朝鮮の短距離弾道ミサイル発射に対しても、トランプ大統領が「金委員長は私との約束を守ってくれると信じている」とツイートしたのに対して、ボルトン氏は都内で「国連制裁決議に違反」と断言し、菅義偉・官房長官も記者会見で「国連安保理決議に違反することは明確。アメリカ政府との間で確認している」と同調した。