京都大学こころの未来研究センター特任教授で『死と生』などの著作がある佐伯啓思氏(69)にとっても、「番組は衝撃的だった」という。
「この女性のように、自分も死にたいと思った人は非常に多かったのではないでしょうか。私自身も、もし体が動かなくなるような難病になったら、延命治療はせずに積極的な安楽死を望みます。ただ、やっぱり家族や周りの人たちとの間で問題が出てくると思う。近親者の人たちも、あまり自分のエゴで『生きていてもらいたい』と思わずに、自分がその状態になったらどう考えるかという視点に立って、みんなで決断をしていく必要があります。
安楽死というのは日本でも西洋でも難しい問題です。しかし、それを直視するという姿勢が西洋にはあり、日本の場合はやっかいな問題から目をそらしてしまっている。それはやはり、日本には戦後の『生命至上主義』が根底にあるからで、殺人も自殺も安楽死も全部一緒くたに扱われて、目をそらされているようなところがあります。長生きしたい、寿命を延ばしたいという生命至上主義を見直すことから始めるべきではないでしょうか」
※週刊ポスト2019年6月21日号