彼女は11月に入ってトラブル解決のためにプライシック医師とメールと電話でやり取りをするなかで、2019年3月までスケジュールに空きがないと告げられたという。自分の体調を考えると来年3月では遅すぎると訴えると、急遽、11月28日ではどうかと打診された。自殺幇助を予定していた人がその前に亡くなって空きができたためだった。

 姉たちが言葉を失ったのは言うまでもない。私が3月まで待てないかと聞くと、小島さんは力を込めてこう言った。

「時すでに遅しが一番怖いんです」

 日本で安楽死が可能ならぎりぎりまで待ってもいいが、それができない以上、早いのは仕方がないという。

 慌ただしく身辺整理をし、11月24日に小島さんと姉たちは成田からスイスへ旅立った。

 バーゼルのホテルの部屋で、小島さんはこう語った。

「現世を離れることができることに、どこかホッとしているところがあるんです。昨日は怖かったんですけれど、今日は怖くないんですよ」

 彼女にとっては、時間が経って安楽死という選択肢が消えてしまうことこそが恐怖だったが、スイスに渡った今、それは消え、表情からは安心のようなものが感じられた。

◆「はい、私は死ぬのです」

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