『糸』に主演する小松菜奈

 近年の映画作りは、漫画や小説、さらには実話といった「原作もの」が多いという印象がある。その点では「歌」をモチーフにした映画も同類なのかもしれないが、実際の本編では歌のメッセージを抽出しながらも、それに偏りすぎないオリジナルストーリーを構築している。『雪の華』も、歌としてはどこか物悲しいイメージが広がるが、映画の前半はむしろほのぼのした雰囲気が広がっている。

 また、原作が漫画やアニメだと登場人物のビジュアルが鮮明に立ち上がってしまうし、小説だとその行間から、読者がキャラクターを想像してしまう。結果として、作られた映画との「違い」をめぐって議論を呼ぶこともあるが、「名曲映画」は、歌の中の住人について深く考える機会は少ないだけに、ある意味フラットに楽しめる。そんな側面から見ても、映画製作の新たな活路を拓くことができのではないか。
  
◇映画からまた新たな音が生まれる
 
 「楽曲インスパイア系」映画の醍醐味は、スクリーンから新たな音楽が生み出されるところにある。

 人気音楽グループGReeeeNの誕生秘話を描いた『キセキ -あの日のソビト-』(2017年)。彼らを演じた菅田将暉、成田凌、横浜流星、杉野遥亮の4人は、その前身のバンド名「グリーンボーイズ」としてCDデビュー。映画公開に先駆け、『声』『道』『キセキ』の3曲をカバーしたCDをリリースしている。また『小さな恋のうた』でも、劇中で佐野勇斗らが結成した高校生バンドが、「小さな恋のうたバンド」としてライブハウスのステージに立ったている。
 
 ちなみに少し昔になるが、DREAMS COME TRUEの『未来予想図Ⅱ』をモチーフにして作られた恋愛映画『未来予想図/ア・イ・シ・テ・ルのサイン』(2007年)では、吉田美和が逆に映画に着想を得て、新曲『ア・イ・シ・テ・ルのサイン~わたしたちの未来予想図』を作り上げた。これは同映画の主題歌として採用されているが、彼女は当時のインタビューで、「『未来予想図Ⅱ』の中に住んでいるあの2人はどうしているんだろう?と考える機会を与えてくれた」と話している。

◇過去の名曲映画との違い

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
「服のはだけた女性がビクビクと痙攣して…」防犯カメラが捉えた“両手ナイフ男”の逮捕劇と、〈浜松一飲めるガールズバー〉から失われた日常【浜松市ガールズバー店員刺殺】
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《左耳に2つのピアスが》地元メディアが「真美子さん」のディープフェイク映像を公開、大谷は「妻の露出に気を使う」スタンス…関係者は「驚きました」
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(27)と伊藤凛さん(26)は、ものの数分間のうちに刺殺されたとされている(飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
「ギャー!!と悲鳴が…」「血のついた黒い服の切れ端がたくさん…」常連客の山下市郎容疑者が“ククリナイフ”で深夜のバーを襲撃《浜松市ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
和久井学被告と、当時25歳だった元キャバクラ店経営者の女性・Aさん
【新宿タワマン殺人・初公判】「オフ会でBBQ、2人でお台場デートにも…」和久井学被告の弁護人が主張した25歳被害女性の「振る舞い」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
大谷翔平がこだわる回転効率とは何か(時事通信フォト)
《メジャー自己最速164キロ記録》大谷翔平が重視する“回転効率”とは何か? 今永昇太や佐々木朗希とも違う“打ちにくい球”の正体 肩やヒジへの負担を懸念する声も
週刊ポスト
『凡夫 寺島知裕。「BUBKA」を作った男』(清談社Publico)を執筆した作家・樋口毅宏氏
「元部下として本にした。それ自体が罪滅ぼしなんです」…雑誌『BUBKA』を生み出した男の「モラハラ・セクハラ」まみれの“負の爪痕”
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト