群馬県中之条町で、65歳以上の町民を対象に10数年にわたって行なわれた有名な調査がある。中之条スタディという。健康維持や病気の予防にはどの程度の運動をすればいいのか、町民に身体活動計をつけてもらい、24時間365日の活動の状況を記録した。
その結果、高血圧や糖尿病、骨粗しょう症、がん、認知症、脳卒中、うつ病などの予防効果がある運動は、「一日8000歩、そのうち速歩きなどの中強度の運動を20分間」ということがわかった。
ウォーキングをする人は、一日8000歩を目標にしている人が多いが、速歩き20分間というのもポイントなのだ。速歩きと遅歩きを交互に繰り返すインターバル速歩をぜひ、やってみてほしい。
この8000歩、速歩き20分という運動を日常的に続けるには、筋力が必要だ。サルコペニア(加齢性筋肉減少症)やフレイル(虚弱)などで筋肉の量が減ってしまうと、歩行スピードが低下し、運動量も運動強度も不足してしまう。
そこで、ぼくは下肢の筋肉を鍛えるスクワットと、骨を丈夫にするかかと落としを広めてきた。この数年、講演会場でも実演し、来場者にもその場でやってもらっている。2000人の会場が総立ちでスクワットをする光景は、ロックコンサートのような迫力だ。
その方法を詳しく書いた『鎌田式「スクワット」と「かかと落とし」』(集英社)は、すぐに増刷がかかり、たくさんの人が実践してくれている。
運動には、「慢性炎症」を抑えるという効果も期待できる。慢性炎症とは、じわじわとくすぶるように炎症が続くこと。慢性炎症は老化に伴って起こりやすく、慢性炎症が起こると老化が加速するという悪循環に陥る。