社長は「芸人・タレントファースト」を涙で宣言した。しかし、真の芸人ファーストはこれまでのように閉ざされた組織の中で彼らを庇護することではない。必要なのは組織そのものを根本的に作り直す覚悟である。
出発点として、まず芸人やタレントを大人扱いすること。すなわち彼らは個人事業主であり、社会的にも活躍するプロだと認識しなければならない。従って、上下関係を軸にした家父長型組織は馴染まず、少なくとも彼らが一人前に育った後には、会社と個人が対等なヨコの関係で契約する組織に切り替えるべきである。
私は20年前に上梓した著書『仕事人(しごとじん)と組織』(有斐閣/1999年)の中で、吉本興業も例に挙げながら、芸能事務所にはプロスポーツの組織や大学、法律事務所などと同じように個人に活動の場を提供し、側面からサポートする「インフラ型組織」が相応しいと述べた。分かりやすくいうと従来のピラミッド型組織を逆さにして、主役である芸能人やスポーツ選手、専門職をマネジャーや経営層が支えるといったイメージである。
今回の芸能人による不祥事を受け、コンプライアンスの徹底を理由に家父長主義による管理が一層強化されるとしたら本末転倒である。