圓歌の弟子で二ツ目の天歌が新作『甲子園の土』で開口一番を務めた後、白酒『つる』、たい平『禁酒番屋』、小遊三『引っ越しの夢』と続き、休憩を挟んで襲名披露口上へ。司会は一門の弟弟子である三遊亭歌武蔵が務め、居並ぶ白酒、たい平、小遊三が次々と口上を述べて、小遊三の音頭で三本締めとなった。
歌武蔵の『支度部屋外伝』(相撲漫談)の後、トリの高座に上がった四代目は、師匠三代目圓歌の爆笑エピソードから『母ちゃんのアンカ』へ。両親が離婚して母に育てられた幼少期の思い出を中心に、笑いを交えながらホロリとさせるこの自伝的作品、『母のアンカ』と表記されることもあるが、演者自身が最後に「母ちゃんのアンカの一席で……」と締めるのが通例だし、内容的にも「母ちゃん」のほうが相応しい。
ちなみに寄席の披露目で圓歌はこの『母ちゃんのアンカ』の他に『お父さんのハンディ』『爆笑龍馬伝』なども演じたが、いずれも本編から脱線した漫談がメインの高座。そしてそれが寄席の空気によく似合う。まさに「寄席の爆笑派」だ。鹿児島訛りを武器に変えた四代目の熱くパワフルな高座は、先代とは異なる「新たな圓歌」の魅力に満ちている。
●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。
※週刊ポスト2019年8月9日号