これは1965年に結ばれた「日韓請求権協定」で両国およびその国民の間の請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決された」とする日本政府のスタンスとはかけ離れたものであり、この文大統領の信条や歴史認識が彼の“行動規範”につながっている。というわけで、いくら日本政府が文句を言ったり対抗措置や報復措置を繰り出したりしたところで、全くポイントがずれてしまうし、問題の解決にもならないのだ。ここが今回、日韓関係がこじれて悪化の一途をたどっている最大の原因だと思う。

 とはいえ、韓国国内の識者の間では文政権の無策や対応のまずさを批判する声が上がっている。これは文大統領も気にせざるを得ない。したがって、私はすでに本連載(第647回、第652回)で述べたように、いま起きている「韓国発」の問題は基本的には放っておけばよい、という意見を変えるつもりはない。文大統領の任期が切れる2022年5月9日まで、毅然として様子見を続ければよいのである。

※週刊ポスト2019年8月16・23日号

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