◆中高年はゆっくり小刻みに動くのがポイント
筋肉を鍛えるには、スクワットのように多少負荷をかけて筋肉を使うトレーニング、ゆっくり伸縮させるストレッチ、ウオーキングのような有酸素運動を組み合わせて行うのが効果的。しかし、そもそも運動不足の中年や体力に自信のない高齢者にとっては、“筋肉を鍛える”というだけでもハードルが高い。
そんな中高年のために周東さんが提案する体操は、日常生活の中で気軽に始められるのが特徴だ。数ある中から6つの体操を後で紹介するが、たとえば目覚めた時に、布団に寝た状態のままで始められるものもある。
「中高年の健康維持のための筋トレは、ゆっくりと、小さく動かすことがポイントです。 張り切って力任せに大きく動かすと、筋を傷めることもあるので注意。それより一つひとつの動きを丁寧に、動かす筋肉を意識しながら行う方が効果的。起床時や就寝前、朝昼晩の食事の前に3分くらいずつ。効率よい代謝のためにも、体操をする前に水を飲むとよいでしょう。毎日、短時間でも継続することが大切です」
代表的な『ゴキブリ体操』は、ひっくり返ったゴキブリのように仰向けに寝たまま手足をバタバタさせるユニークな運動だが、この手足を小刻みに震わせる動きは、末端から血行を促して自律神経を整えるという。
実際にやってみると滞ったものが流れるような実感があり気持ちがいい。この心地よさを感じることが大切だという。高齢者などは起床時に限らず、いつでもこまめに手足を震わせるのがおすすめだ。
「高齢で、今から筋肉を鍛えても…と、あきらめている人も少なくありません。でも、高齢者こそ、体を動かして筋肉を鍛え、体が変わることを実感してほしい。生きている限り健康であり続けることが大事なのです。朝さわやかに目覚め、体調がよいと気持ちも充実します。そんな一日一日を積み重ねていくことが、何よりの健康長寿の秘訣です」
そこで、クリニックを訪れる中高年の患者の状態やアドバイスした内容を基に、周東さんが開発したオリジナル筋力作り体操を紹介しよう。
2~3種類を選んで計3分間ほど、起床時、就寝前、朝昼晩の食事前などに行うほか、動きを覚えたら思いついた時に気軽に行ってみよう。
◆『ゴキブリ体操』
手足の血行を促進、腰椎を矯正して腰痛の予防にも。寝起きに行えば自律神経が整ってすっきり起床でき、就寝前ならよい睡眠が。この運動で腹筋や腸腰筋、大腰筋、骨盤内腔にある筋肉が鍛えられると腹腔を覆うコルセットのような状態になり、体全体の脂肪代謝を促進する効果も。
【1】仰向けの状態でひざを立て、両腕を伸ばしたまま、頭上へ上げたり、下ろしたりを繰り返す。
【2】両手、両足をまっすぐ垂直に伸ばす。
【3】ひっくり返って足をバタつかせるゴキブリをイメージしながら両手、両足を動かす。初めはゆっくり、だんだん速く。頭を軽く持ち上げるとより効果的。