〈「毎日のように一緒にいた」という高倉は、吉野ママには銀幕の中とは違う一面を見せた。〉
健さんは時間があると、「およし、ご飯を食べに行こう」って、南青山の私の家まで、ポルシェで迎えに来てくれて、2人で飯倉のイタリアン「キャンティ」に行く。そのあと、うちの店に来るのがお決まりのコース。健さんはお酒を飲まないから、カウンターの端に黙って座って、インスタントコーヒーを飲んでるの。私は何が楽しいんだろうと思っていたけど、健さん目当ての女性のお客さんが来るから店は大繁盛(笑い)。
健さんは自分からは喋らないけど、私のバカ話を聞いて「お前、また男食ってるのか?」って笑ってた。
その頃、健さんは、水前寺清子の歌が好きで『大勝負』をかけては、歌詞に聞き入りながら、ハラハラと涙を流すの。ロマンチストなのよ。
あまりにウチに入り浸っているもんだから、健さんにあっちの噂も立っちゃって。お店で、女優の清川虹子さんに「あんた、私だけには本当のことを言って頂戴。健さんとはデキているでしょ?」と詰問されたけど、本当に私たちは何もなかったのよ!
●取材・文/宇都宮直子
※週刊ポスト2019年8月30日号