「同じ人間が書いてますからね。先日も他界した母の里を何十年ぶりに訪ねたら、畔は崩れてるしバスは走ってないし、里自体が空洞化してた。もちろん食うために里を捨てるのは仕方ない。でも里の崩壊を食い止める抵抗勢力も私は片方にあって欲しくて、境目になった昭和30年代を書いたんです。

 例えば浅草に来るアジア人を見てると、明日は必ず良くなると信じた目をしてる。有形無形の搾取構造が人々を分断し、被災者同士でさえ対立させられる手前の時代を、少なくとも私はおもろいなあと思います」

 9月にはLGBTを主題にしたバイオレンス、11月にも新作が刊行予定と、ジャンルを超えた活躍が期待される赤松氏。暴力を描いてもどこか優しく、「所詮糞袋」としての隣人愛に貫かれた偏りのない視線や圧倒的な熱量は、一たび読めば虜になること、請け合いである。

【プロフィール】あかまつ・りいち/1956年香川県生まれ。大学卒業後、某消費者金融に入社、上場業務に関わるなどし、後に独立。ゴルフ場の管理設計を担うコンサル業で成功を収めるが、3.11後、経営破綻。土木作業員や除染作業員を経て上京し、風俗店員等で食い繋ぐ中、昨年『藻屑蟹』で大藪春彦新人賞を受賞しデビュー。以来『鯖』『らんちう』『ボダ子』と話題作を続々発表し、「私は書きたいもんが憑りついてしまうと、寝てても最初の30枚くらいが文章で浮かぶんです」。170cm、85kg、O型。

構成■橋本紀子 撮影■三島正

※週刊ポスト2019年8月30日号

関連記事

トピックス

高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン