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VRで東京五輪観戦の可能性 最前席より臨場感ある体験

◆5Gで注目されるVRとAR

 スポーツとVR・ARが急速に近づく理由には「5G」が関わっている。5Gとは「第五世代携帯電話」のことで、今使っている「4G」の次。欧米や韓国、中国ではサービスがスタートしているが、日本では2020年春からとなっている。

 4Gと5Gではなにが違うのか? まず、スピードが違う。現在の4Gは、条件が整った良い場所なら100Mbpsを超えるが、混み合う場所ではスピードが極端に落ちやすい。それに対して5Gは、条件が良い時の速度はさらに一桁・二桁速くなり、数Gbpsまで速くなる。たくさんの人があつまる場所での速度低下や通信障害も少なくなる。また、操作してから情報が表示されるまでの「遅延」と呼ばれる時間も短くなる。

 このため、「よりリッチなデータを使い」「よりたくさんの人が一度に集まって」「目の前で起きていることからの時間のずれがなく」体験が可能になる。これらの要素は、すべてスポーツを題材にVR・ARを使う上ではプラスのものだ。

 また同時に、5Gを展開する携帯電話事業者にとってもスポーツを題材にしたVR・ARはとても重要な意味を持つ。

 理由は「スマホでは5Gはわかりづらい」からだ。もちろん、スマホの通信速度が速くなれば、誰もがうれしいはず。だが、今スマホで使っているコンテンツの質が劇的に変わるわけではない。「今のスマホが遅くてつかいものにならない」と思っている人はあまりいないだろう。5Gの時代には、もちろんスマホも進化する。しかし、「5Gでしかできないこと」をアピールするには、スマホでは難しい。スマホは4Gに最適化された機器だからだ。

 だが、VRやARはまだスマホほど形が出来上がっておらず、様々なあり方を検討できる状況だ。だからこそ、5Gの時代に合わせたサービスを考え、テストしやすい。HMDやスマートグラスをかぶっている姿はまだ目新しいものだから、携帯電話事業者としても「新しい時代」をアピールしやすい、というメリットもある。

◆ワールドカップやオリンピックのスタジアムから5Gは始まる

 そのため携帯電話事業者は、5Gのメリットを打ち出すためにも、試験やプロモーションを目的とした「テストサービス」や「プレサービス」では、スポーツイベントやスタジアムを使ってのアピールが多い。前出の「International Basketball Games 2019」の例も、ソフトバンクが5Gのテスト兼プロモーションとして行ったものだ。

 実は5Gは、現状のテスト段階では遠くまで電波を飛ばせない。またサービスが始まっても、すぐにいまの4Gほどのカバーエリアは期待できない。高速な通信を実現するには「固定回線による高速な通信」との接続も必要なので、準備もそれなりに必要だ。そのため、今もそうだが、2020年にもスタートしてすぐの段階では、「特定のエリアで5Gが使える」というパターンが多くなる。

 そこで重要なイベントになるのが、もうすぐ始まるラグビー・ワールドカップとオリンピックだ。

 NTTドコモはラグビー・ワールドカップの時期に合わせ、9月20日から5Gの「プレサービス」を開始する。全国8つのスタジアムを5Gのエリアにし、5G対応端末を貸し出して、マルチアングルで試合を楽しめるサービスを行う。現状VRやARのデモは予定されていないが、こうした会場で得たデータは十分にVR・ARに活用可能だ。

 オリンピックの時には日本でも5Gはスタートしている。各携帯電話事業者は、オリンピックの各会場近辺での5Gサポートを積極的に行う、としている。オリンピック会場に足を運べなくても、そこに多数のカメラを設置し、その映像をVRで楽しむことは十分に可能になる。暑いさなかに開催されることから批判も多い東京オリンピックだが、涼しい室内から会場にいるような迫力で楽しむためのインフラは整いつつある。

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