鈴木:今は葬式も大々的にできないですしね。逆に最近は、組事務所をめぐって組長の死後に組と遺族で揉めるケースが増えています。組事務所は、組のものだけど名義は組長の所有物になっている。死んだら昔は跡目を継いだ次の組長が遺族に金を払って譲り受けるんだけど、今はそんな金が払えないものだから、遺族もなかなか事務所を渡してくれない。それで揉めているケースを結構聞きます。
溝口:暴力団というのは、親分と子分の疑似親子関係、疑似家族関係なんです。その親分が死ぬと、疑似家族と本当の家族との間でトラブルになることは、ヤクザの因果なのかもしれません。
【プロフィール】
◆すずき・ともひこ/1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『潜入ルポ ヤクザの修羅場』『ヤクザと原発』『サカナとヤクザ』など。
◆みぞぐち・あつし/1942年、東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業。ノンフィクション作家。『食肉の帝王』で2004年に講談社ノンフィクション賞を受賞。主な著書に『暴力団』『山口組三国志 織田絆誠という男』『さらば! サラリーマン』など。
※週刊ポスト2019年11月29日号